世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月5日

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 米海軍大学のホームズ教授が、China US Focusのウェブサイトに7月4日付で掲載された論説で、南シナ海における中国の海洋進出は、これまでは「小さな棍棒をもつ外交」であったが、最近これを「大小の棍棒を持つ外交」に切り換え、東南アジア諸国を軍事的に威圧し、 自らの基準を押し付けようとしている、と論じています。

 すなわち、最近の中国の南シナ海における行動には、二つの顕著な特徴が見られる。第一は、一方的基準によって領土紛争を早急に解決するため、力の遥かに劣る東南アジアの沿岸国に対し、公然と挑発的行動をとるようになった。

 第二に、「小さな棍棒をもった外交」(small-stick diplomacy)を放棄し、海軍力を使おうとしている。「小さな棍棒をもった」とは武装していない法的強制力を持つ公船を使うことである。しかし、スカボロー礁では、フィリピンの船舶を追い出すために、フリゲート艦のような海軍力を展開した。つまり、軍事的、非軍事的船舶の両者を使い、「大小の棍棒をもった(big/small –stick)」政策を打ち出したのである。

 中国は船舶や航空機が自由に行き来できる新しい基準(a new norm)を作ろうとしている。中国の一方的な言い分によれば、南シナ海は過去何百年にもわたって中国の海であった。今日では南シナ海は世界の公共財産ではなく、中国の内海のようになりつつある。

 ベトナムもフィリピンも、中国に対抗して、自分たちの主張を繰り返している。しかし、中国の軍事力に比べれば物の数ではない。たとえば、フィリピンが誇ることのできる装備といえば、旧式の米国沿岸警備船ぐらいである。

 この「大小の棍棒外交」が効果をもつようになれば、中国の行動は、ジャーナリズムの世界では常態化され、とりたてて大きな記事にはならず、無視されるだけになる。これは中国の思うつぼである。

 米国の海上軍事手段は誇るべきものであるが、他方、この海域への政治的関心はわずかである。最近、西側の評論家や役人たちのなかで、スカボロー礁や尖閣諸島がワシントンから見て、取るに足らない価値しか持たない地図上のシミのようなもの、と述べた人たちは何人ぐらいいただろうか。

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