「囲い」のない児童自立支援施設
子供たちを「環境に負けない人間」に
育てる(前篇)

茨城学園の挑戦


大元よしき (たいげん・よしき)  ライター

1962年東京生まれ。外資系IT企業からライターに転身。スポーツのほか、歴史関連も執筆中。著書に『あの負けがあってこそ』『命のバトン―自閉症児と個性派不登校児の教室』『1万回の体当たり―タックルマン石塚武生 炎のメッセージ』(以上ウェッジ)、『一緒に見上げた空』(扶桑社)。

ルポ・少年院の子どもたち

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広大な敷地に溢れる緑。農園から校舎に戻る3人の小学生とすれ違った。屈託のない笑顔は真夏のヒマワリを連想させるが、なぜここにいるのか、複雑な背景を聞けば、その暗部の深さに飲み込まれそうな思いがした。

児童自立支援施設・茨城学園

 各教室では能力別に少人数の授業が行われていた。生徒2名に教員が1名というクラスもある。教室の広さとは不釣り合いでも、双方に濃密な時間であろうことは想像に難くない。

 今回は社会に適応出来ない子供たちの立ち直りや、社会的自立に向けた教育を行っている「児童自立支援施設―茨城学園」を取材した。

 「明治の昔から子供に必要なのは家庭であり学校であると言われていました」

 「この施設に入って来る子たちの家庭環境も昔から変わっていません。その多くは(機能不全の)父子家庭、母子家庭です。この子たちには家庭も学校も不十分だったということです」

 茨城学園の茂木肇指導一課長は続ける。

 「ここに入ってくる子たちは虞犯(ぐはん)です。そこが少年院とは違う点です。虞犯とは不良行為、及びその恐れがある、という意味です。いけないことをしてしまった、もしくはしてしまいそうになった。そんな子たちが入ってくるのですが、鍵の掛かる施設ではないので時には逃げられてしまうこともあります。こうした出入りが自由に出来る施設で、時間を掛けて子供たちと向き合いながら行動改善に努めています。まずは職員が彼らにとって信頼のできる大人にならなければいけません。我々は毎日試されているようなものです。この大人は信用できると思った瞬間から子供たちは心を開いてきます」

子供たちと職員をつなぐ「信頼関係」

 児童自立支援施設とは、一般社会では耳慣れない言葉なので説明を必要とする。

 「不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により、生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせ個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者についても相談その他の援助を行うことを目的とする施設」と児童福祉法に記されている。

 以前は「感化院」その後「教護院」と名称が変わり、平成9年から現在の「児童自立支援施設」に変わった。

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「ルポ・少年院の子どもたち」

著者

大元よしき(たいげん・よしき)

ライター

1962年東京生まれ。外資系IT企業からライターに転身。スポーツのほか、歴史関連も執筆中。著書に『あの負けがあってこそ』『命のバトン―自閉症児と個性派不登校児の教室』『1万回の体当たり―タックルマン石塚武生 炎のメッセージ』(以上ウェッジ)、『一緒に見上げた空』(扶桑社)。

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