去る9月26日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6・7号機の再稼働問題について、泉田裕彦新潟県知事が東電の安全審査申請を条件付きで承認すると表明した。これにより、東電を巡って膠着していた大きな課題の一つがようやく動き出した。だが、遅きに失したと言わざるを得ない。
新潟県と東電の間にこれまで様々な紆余曲折があったことを含み置いたとしても、法的には不当な原発停止が続いている。
停止原発の代替としての火力発電のために、LNG(液化天然ガス)の追加輸入量が相当増えた煽りで、2012年9月から東京電力管内の電気料金は規制部門で8.46%、非規制部門(自由化部門)で14.90%の値上げ改定となってしまった。東電自身はもちろんのこと、何の落ち度もない一般消費者や中小企業など電力需要家までもが、政治的理由によって本来払わされる必要のない費用を払わされている。
昨年の値上げ時の原価算定では、東電柏崎刈羽原発1・5・6・7号機が13年4月から、同3・4号機が14年4月から順次稼働がなされる想定だった。しかし、原発を巡る総理官邸や経済産業省、原子力規制委員会の姿勢などを考えると、柏崎刈羽原発の稼働がゼロのままで“塩漬け状態”が続くという最悪の場合を想定してしまう。その最悪の場合と柏崎刈羽原発が稼働する場合とを比較すると、稼働率によって差があるが、私の試算では、追加燃料費の負担額は年間約5900億(10年度実績の稼働率55.3%の場合)~9600億円(欧米並みの稼働率90%の場合)となってしまう。この負担額のごく一部については東電の自助努力で吸収することができなくもないが、大部分に関しては東電管内の需要家が賄うしかない。
震災による東電福島第一原発事故後の“政治的空気”のせいか、国内にある全ての無事故原発までもが現在、通常の稼働ができない状態にある。エネルギー資源の大半を外国からの輸入に依存してしまう状況が当面続くことを考慮すれば、既設原発が電力の低廉安定供給の要として担っていくべき役割は、震災の前後で何ら変わっていない。