チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年10月22日

»著者プロフィール
著者
閉じる

富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 習近平体制の特徴を示すとされる“八項規定 六項禁令”――。俗に倹約令とかぜい沢禁止令と呼ばれる政策の効果が社会の隅々にまで影響を及ぼしている。

中国を“見切った”富裕層たち

 その1つとしていま注目されているのが、ビジネスで成功を収めた富裕層たちの海外逃避現象であり、また有力官僚たちの失踪問題、そして民間金融業者(地下銀行を営む者たち)が違法に収集した資金を持ち逃げするという事件である。

 業態はそれぞれ違っていても、いずれにも共通しているのはある意味で中国を“見切った”という点だろう。

 こうした現象に対しては、中国国内の資産が持ち出されることに神経質になる政府と、それと同時に、持ち出す資産も、海外に逃げ出す手段もない大多数の国民からも反発が強く、メディアがテーマとして扱う頻度も急激に増してきている。

 そうしたなか、8月24日付で出された『中国新聞網』の記事が大きな話題を呼んだ。

1兆円を超す不動産投資、うち7割が現金払い

 タイトルは、〈昨年1年間、中国人がアメリカで買ったアメリカの不動産の総額は123億ドルに達する うち7割が現金で支払い〉という衝撃的なものだった。記事の内容は、『中国評論通信社』と『チャイナプレスUSA』からの引用だが、数字そのものは全米リアルター協会(NAR)のものだ。

 記事の目玉はタイトルにある通り。中国人が年間1兆円を超える不動産をアメリカ国内で買い漁っているというものだ。しかも、そのほとんどが高額物件だというのに、キャッシュでポンと買ってしまったというのだから、いまさらながらその購買力に驚かされる。

 「中国人がアメリカで不動産を買う目的の1つには、現地の永住権を取得することですから、投じる金額は大きいに越したことはないのです。なかには買うだけでグリーンカードがついてくる高額物件もありますからね」(国務院OB)

 事実、中国人が現地で購入した不動産は高額な物件が目立つ。NARの集計によれば、中国人が買った物件の平均値(42万5000ドル)は、アメリカ国内で売買された物件の平均値の約2倍で、すべての外国人が購入した物件の平均値(27万6000ドル)の1.5倍にもなるという。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る