欧州諸国が一時積極的に導入した固定価格買い取り制度(FIT)が貢献し、世界の太陽光発電設備の設置量は拡大を続けている。一方、中国メーカーを中心に、太陽光モジュール(太陽光パネルと同じだが、メーカーなどではモジュールと呼ばれることが多い)の生産量は設置量以上のペースで拡大したため、ここ数年市場は完全な供給過剰になり、モジュール価格は大きく下落している。
中国メーカーの安値攻勢に敗れた自国メーカーを保護するために、米国は昨年から中国製太陽電池に対して課税を行っている。また、欧州委員会も課税を検討したが、中国政府が報復を匂わせたことから、中国企業が自主的に価格と輸出数量を規制することで決着した。最低価格は1ワット当たり56ユーロセント、年間数量は700万kWだ。この辺りの経緯は、「太陽光パネルで貿易摩擦‐欧州にツケを回す中国の産業政策」を読んで戴ければと思う。
太陽光モジュール生産1位から子会社破綻
サンテックを巡るそれぞれの思惑
6年前日本のシャープは世界一の太陽光モジュール生産量を誇った。翌年にはその地位はドイツQセルズに奪われたが、Qセルズもその地位を維持することはできず、中国サンテックが1位となった。いま、シャープはリストラを経て辛うじて経常利益(25年の7月から9月期で33億円、前年同期は1973億円の赤字)を上げているが、Qセルズは12年の4月に破綻し韓国資本に買われた。サンテックも13年3月に社債の償還に行き詰まり、中国の製造子会社は破綻した。
ニューヨーク証券取引所に上場されている破綻を免れたサンテック・パワー・ホールディングス(以下SPH)の社債償還、負債返済を巡り、中国地方政府、香港企業と米国投資家の思惑の違いが明らかになり始めた。中国と米国の債権者の扱いが異なることが、その背景にある。中国企業への投資は、やはり「慎重に」だ。
FITが太陽光発電市場を作りだした
FITは「みんなの力」で再生可能エネルギー(再エネ)を増やす政策だ。太陽光発電、風力発電などからの電気を高く買い取り、その負担は電気料金で広く、薄く回収する。しかし、みんなの力ということは、所得に関係なくということだ。このため、導入量が増え、負担額が増えるに連れ問題が出てくる。
ドイツでは、13年のFITの負担額は1kWh当たり5.28ユーロセントだ。14年の負担額は6.24セントになると既に発表されている。標準家庭で年間約3万円を再エネ支援に負担することになる。所得が低く節電の余地のない家庭にとっては大きな負担だ。まだ負担額が3.59セントだった12年にドイツで行われた世論調査でも、負担額が高過ぎるが回答の半分を超えた。