学びの選択肢を広げる遠方への進学
県外進学のうち、東京でも大阪でもないところへの進学も多く、特に近隣の県の大学への進学が数多く見られる。これは、大学の特徴に鑑みて高校生が自身の興味に応じた進学選択を行っていることを反映していると考えられる。こうした移動は望ましいもので、近隣だけでなく日本全国、外国も含めて自身の興味に応じた進学が行えるのが理想であろう。
まだ海外の大学への進学は一般的ではないものの、日本国内であれば、ある程度遠方の大学に進学することも非現実的ではない。こうした遠方への進学傾向はどのように変化してきたであろうか。
ここでは簡単に、東日本から東日本・西日本へ、西日本から東日本・西日本への進学率がどのように変わったかをみてみよう。なお、東西日本の定義はNTT東日本および西日本による区分を用いた。
図4は東日本の高校から東日本・西日本の大学への進学率を表している。青色の棒グラフが東日本への進学率、オレンジ色の棒グラフが西日本への進学率である。
ここでの東日本への進学率とは、かなり粗いものの、東日本の高校の、県内進学および近隣県への進学傾向を、西日本への進学率は、遠方への進学傾向を示している。この図を見る限りでは、コロナ禍を含め過去40年でさほど大きな変化は見られない。
では西日本ではどうであろうか。図5は西日本の高校から東日本・西日本の大学への進学率を表している。ここでも青色の棒グラフが東日本への進学率、オレンジ色の棒グラフが西日本への進学率である。
ここでは、80年から19年にかけて、2割強から1割強へと東日本への進学率の低下がみられる。西日本から東日本、つまり遠方への進学傾向が弱まったといえよう。ここでもコロナ禍の影響はほとんど見られない。
以上で見てきたように、大学進学に伴う地域間移動の傾向としては、過去40年で、全国的に県内進学率が上昇した一方で東京への進学率が低下し、西日本を中心に遠方への進学率がやや低下してきたと考えられる。この傾向の変化が、近場に自身が望む進学先が揃ってきたことに起因するのであれば歓迎すべき変化であるが、金銭的制約や妥協の産物であるならば憂慮すべき変化である。それが、東京23区の大学定員を制限するといった政策によるものだとしたら、その功罪を精査する必要がある。
進学の制度について、高校生から選択肢を奪うような施策をすれば、彼らの学びや成長を奪うことになる。希望にかなった進学選択が行える環境づくりが日本経済の発展および成長につながることは間違いない。