2024年11月1日(金)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2024年4月11日

デジタル赤字は米国だけではないのか?

 なお、過去1年以上にわたって日本のデジタル赤字を取り上げて議論してきた経験から思うことだが、「デジタルサービスは米国の独り勝ちで、日本に限った問題ではないのではないか」といった疑問を抱く向きはどうやら多そうである。確かに、「日本にはGAFAMのような企業は無い」とよく言われるものの、それは欧州にもない。だから欧州もデジタル赤字なのではないか、と発想する気持ちは理解できる。

 だが、話はそう単純ではない。結論から言えば、「米国の独り勝ち」は事実だが、日本の赤字幅は世界的に見ても大きいという現実がある。

 図表①は経済協力開発機構(OECD)統計から日米欧を主軸に主要国の比較を試みたものだ。欧州連合(EU)についてはドイツ、フランスの2大国以外に、通信・コンピューター・情報サービスの黒字が特に大きいオランダやフィンランドも加えている。ちなみに、日本の通信・コンピューター・情報サービス収支を地域別に見た場合、対オランダの赤字が相応に大きな存在であることは知られている。これは図表②を見ると分かる。

 デジタル関連収支の分類は日銀レビューの考え方に準拠しており、通信・コンピューター・情報サービス、専門・経営コンサルティングサービス、知的財産権等使用料(除く研究開発ライセンス等使用料・産業財産権等使用料)の3つを合計している。しかし、国によって(特に欧州では)知的財産権等使用料の詳細な内訳が開示されていないことも多く、そのため完全な横比較が難しい技術的な制約もあるが、日本のデジタル赤字の現在地を知る上では参考になるだろう。

デジタル関連収支は米、英、EUの3強

 具体的に数字を見ると、デジタル関連収支は米国が+1114億ドル、英国が+692億ドルとなっており、やはり米国の黒字幅が頭抜けて大きい。しかし、EU(アイルランド除く)も+332億ドルと、まとまった幅で黒字を記録しており、米国・英国・EUの3強の様相である。

 英国には世界的なコンサルティング企業の本社機能が集中しているため(例えばデロイト、PwC、EYなど)、専門・経営コンサルティングサービスの黒字が膨らみやすいという事情が推測される。つまり、デジタル関連収支の定義には入るものの、実態はコンサルティングという非デジタル要素が大きいと推測される。


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