2024年5月20日(月)

BBC News

2024年5月8日

イスラエル国防軍(IDF)は7日、パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファとエジプトを結ぶルートの検問所について、パレスチナ側を同軍の「作戦統制下」に置いたと発表した。

昨年10月にイスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦争が始まって以来、ラファ検問所は援助物資の重要な入り口であり、人々が逃げ出すことのできる唯一の出口となっている。

IDFの戦車旅団は一晩の激しい攻撃の末、検問所へと移動した。

イスラエルとガザ地区の間にあるケレム・シャローム検問所も閉鎖されているため、国連はガザに支援物資を運ぶ二つの主要経路がふさがれた状態にあると警告している。

一方、米ホワイトハウスはこの日、ケレム・シャローム検問所の通行が8日に再開されると聞いていると発表した。

「テロリストが使用」とイスラエル軍

IDFは、ラファ検問所が「テロリストの目的に使用されている」という情報に基づき、部隊がガザ側で「作戦統制を確立した」と発表した。

詳細を明らかにしなかったものの、IDFは、5日にこの地域から発射された迫撃砲でイスラエル兵4人が死亡し、IDFが管理するケレム・シャローム検問所でも負傷者が出たと説明した。

IDFはさらに、検問所にいる大きなイスラエル国旗を掲げた装甲車と、パレスチナ人移住センター前の広場にいる多数の戦車を映したドローン映像を公開した。

イスラエル国防軍関係者によると、ラファ検問所は現在閉鎖されており、治安状況が許せばケレム・シャローム検問所を再開させるという。

IDFはその後、ハマスがさらに4発の迫撃砲をケレム・シャローム検問所に向けて発射したと発表した。

国連は人道支援の停滞を懸念

国連人道問題調整事務所(UNOCHA)のイエンス・レルケ報道官は、イスラエルが国連職員の両検問所へのアクセスを拒否したと発表した。

「援助物資をガザに運ぶ2本の大動脈が、現在、寸断されている」と、レルケ報道官は述べた。

同報道官は、国連の貯蔵タンクには「1日分の燃料」しかないと述べ、「長期にわたって燃料が運び込まれなければ、それは人道支援活動を押し殺す非常に有効な方法となる」と警告した。

IDFはこれに対してすぐに反応していない。ただこれまで、人道援助物資のガザへの、そしてガザ内部での輸送を促進すると約束し、北部での2カ所を含む代替検問所を設置したとしている。

ラファに滞在している国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のサム・ローズ氏はBBCに対し、燃料は「ガザ地区内のあらゆることの基礎」だと語った。

「水を通すにも、健康センターを運営するにも、病院での救命治療にも燃料が必要だ。もし燃料が亡くなれば、すべてが停止してしまう」

ローズ氏はまた、ラファにいる人々が置かれている状況を「まったくの惨状」だと表現した。

「通りは移動中の人々で渋滞している。避難区域の中にいる人々だけでなく、外にいる人々もいる。(中略)早々に移動することを決めた人々もいる」

しかし、「安全な場所はどこにもない」と、ローズ氏は付け加えた。

「安全地帯の半分は砂丘の上にあり、人々が寝泊まりできる場所ではない。残りの半分はハンユニスにあって、ここ数週間、猛烈な砲撃を受けている」

IDFは6日、ハマスの戦闘員排除とインフラ破壊のための「限定的な」作戦を行うとして、現地の数万人のパレスチナ人に対し、ラファの東側から「拡大人道地域」に避難するよう指示を出した。「拡大人道地域」は、ラファの北側のアル・マワシからハンユニス、ガザ中部デイル・アル・バラフへと広がっている。

ハマスは、イスラエルのラファ検問所への侵入と占拠は、新たな停戦協定を確保しようとする、中東地域の調停者の動きを弱体化させることが目的だと指摘している。

ハマスは6日、エジプトとカタールによる停戦案を受け入れたと発表した。提案には、戦闘を数週間休止し、ガザで拘束されている数十人の人質を解放する内容が含まれている。

しかしイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7日、ハマスの発表は「イスラエルの必要条件からかけ離れた」ものであり、「イスラエル軍のラファ入りを妨害する」ための作戦だが、それが失敗したのだと述べた。

また、この日にカイロに派遣された中堅レベルのイスラエル代表団に、人質の返還に必要な条件と「イスラエルの安全保障を確保するための重要な要件」について「断固とした態度を貫く」よう指示したと明らかにした。

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は、「ハマスが壊滅するまで、あるいは最初の人質が帰国するまで、ラファでの活動をやめることはない」と、ガザとの境界線にいる部隊に伝えている。

一方、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、イスラエル・ハマス間の合意は、「ガザのパレスチナ人、そして人質とその家族の耐え難い苦しみを止めるために不可欠だ」と述べた。

「両当事者が政治的勇気を示し、今すぐ合意するための努力を惜しまないよう、改めて訴える」

昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、250人以上が人質となった。イスラエルは直後に報復攻撃を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、ガザでのイスラエルの軍事作戦でこれまでに3万4780人以上が殺されたとしている。

同11月には1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えに、ハマスの人質105人が解放された。

イスラエルによると、ガザでは依然128人の人質の行方がわかっておらず、そのうち少なくとも34人は死亡したと推定されている。

ラファへの攻撃

イスラエルは長らく、この戦争での勝利には、ラファに残ったハマス部隊の殲滅(せんめつ)が必要だと主張している。

ラファには現在、戦争で避難民となった100万人以上のパレスチナ人が滞在している。そのため国連や西側諸国は、ラファでの大規模な地上作戦は人道的な大惨事を引き起こすと警告している。

6日夜には、ラファの上空が炎で照らされ、イスラエルによる砲撃が続いているとの目撃情報が出た。

パレスチナのWAFA通信は、市内のクウェート専門病院の医療関係者の話として、20人が殺害され、数十人が負傷したと伝えた。

ロイター通信が取材したライード・アル・ダービーさんは、西側のタル・アルスルタン地区にある自宅が空襲で全壊し、妻と子供が殺されたと語った。

アルジネイネフ地区でも、2世帯が住んでいた住宅のがれきの下から7人の遺体が見つかったと報告されている。この地区は、IDFが6日に避難を命じたラファの東側に位置する。

IDFは7日朝に発表した声明で、「ハマスのテロリストを排除し、ラファ東部の特定地域内のハマスのテロリストのインフラを解体する」ための「精密な」作戦を開始したと発表した。

また、戦闘機と地上部隊が、ラファでハマスが使っていた軍事施設や地下インフラなどを攻撃し、約20人の「テロリスト」を殺害、三つの作戦用トンネルのシャフトを破壊したと説明した。

(英語記事 Gaza: Israel takes Rafah crossing as truce talks continue

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cd13p11lywro


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