2024年5月21日(火)

BBC News

2024年5月10日

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファへの全面侵攻を命じるなら武器の提供を停止するとアメリカが警告したのに対し、イスラエルは「独力で対処」できると言い切った。

アメリカのジョー・バイデン大統領は8日放送の米CNNのインタビューで、同国製の爆弾がパレスチナの民間人を殺害する目的で使われてきたと説明。「もしイスラエルがラファに侵攻すれば、ラファへの対応で過去に使用されてきた武器の供給はしない」と述べた。

この警告を受けてネタニヤフ氏は9日、「必要なら(中略)私たちは単独で対処する。必要なら私たちは独力で踏ん張って戦う」と表明した。

また、1948年の第1次中東戦争に言及。「76年前の独立戦争では多勢に無勢の状況だった」、「私たちに武器はなかった。イスラエルへの武器輸出は禁止された。だが私たちは、偉大な精神力と勇敢さ、団結で勝利した」と述べた。

さらに、バイデン氏が武器提供を停止しても、イスラエルは「持ちこたえる以上のことができる」とした。

バイデン氏の発言については、ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官が9日、「ラファへの突入」によってハマス壊滅というイスラエルの目的が前進するとは考えていないことを示すものだと説明した。

同時に、「ハマスの永続的な敗北がイスラエルの目標であることに変わりはなく、私たちもその目標を共有している」と述べた。

また、「アメリカがイスラエルから離れようとしている、あるいはハマス打倒を助ける気がないという議論は、事実と合致しない」とした。

ラファ攻撃で民間人に死者

ラファでの状況について、イスラエル軍は、イスラム組織ハマスの戦闘員らに対する「標的を絞った攻撃」を実施中だとしている。イスラエル政府は、本格侵攻の可能性を排除していない。

パレスチナのメディアによると、ラファ東部アル・ジュネイネ地区で9日午後、イスラエル軍の空爆があり、2人が殺害された。同地区はイスラエル軍が6日夜、地上作戦の開始前に住民に避難を命じた地区の一つ。

また、エジプトとの境界に接するブラジル地区でも空爆があり、3人が殺されたとされる。同地区は避難の対象にされていない。

ハマスと武装組織「イスラム聖戦(PIJ)」は、ラファ東郊で迫撃砲や対戦車ミサイルでイスラエル軍を攻撃していると説明した。両組織は、イスラエルやアメリカなどがテロ組織に指定している。

ハマスはまた、ラファの東でトンネルを仕掛け爆弾で爆破し、イスラエル軍の車両3台を下敷きにしたとした。イスラエル軍は、この爆発で兵士3人が中程度のけがを負ったとした。

夜間には、ラファ西部タル・アル・スルタン地区の民家がイスラエル軍による空爆を受け、少なくとも5人が殺害されたとされる。うち3人は子どもで、救急当局によると、1歳児も含まれているという。

国連は、6日以降で8万人以上がラファから避難したと9日に発表した。同市は砲撃が絶えず、人々が密集する地域の近くにイスラエル軍の戦車が集結している。

国連はまた、支援物資が検問所を通って運び込まれないため、100万人以上の避難者らは食料と燃料の不足に見舞われていると警告した。

イスラエル軍はラファでの作戦開始と同時に、エジプトとの境界にあるラファ検問所を掌握し封鎖。イスラエルとの境界にあるケレム・シャローム検問所は再開したが、国連は職員や車両が近づくには危険すぎるとしている。

和平合意の期待しぼむ

和平合意は、今週初めには間近に迫ったとも思われたが、イスラエルが条件について受け入れらないとし、期待は薄れている。イスラエルとハマスの双方は9日、エジプト・カイロでの間接的な協議の場から代表団を引き上げた。

ガザでの戦争は開始から7カ月がたつ。イスラエルは、ラファの占拠とハマス大隊の壊滅を実現しない限り、勝利はあり得ないと主張している。

昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、約1200人が殺害され、252人が人質となった。イスラエルは直後にガザへの報復攻撃を開始した。

ハマスが運営するガザ保健当局は、ガザでこれまでに3万4900人以上が殺されたとしている。

イスラエルによると、人質のうち128人の行方がわかっておらず、少なくとも36人は死亡したと推定されている。

(英語記事 Gaza war: Netanyahu says Israel can 'stand alone' if US halts arms shipments

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0x0l895l72o


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