規模追わず黒字出す
ローカルスーパー


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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少子高齢化に伴う市場縮小、コンビニなど異業種との競争激化─。再編が進み、売上は上位に集中。弱者淘汰に拍車がかかるスーパー業界。果てなき価格競争をよそに健全経営を続ける、ローカルスーパーの独自戦略とは。

1軒1軒の玄関先まで食料品を売り歩く移動販売車(撮影:編集部)

 石川県小松市。郊外の住宅地を、移動スーパーのカラフルなトラックが走る。運営するのは、自動車販売を生業とするシブヤコーポレーション。移動販売車を製作し、各地の事業者に納品する中で、徳島県の移動スーパー「とくし丸」の事業理念に共感。畑違いながら、小売の世界に足を踏み入れた。

 事業の最大の特徴は、黒字運営を大前提としている点だ。近年、高齢化や商店の淘汰などによる買い物弱者の急増が問題となっており、地域密着を謳う地場スーパーが移動販売事業に続々乗り出している。だが、採算性のなさから本業の収支を圧迫するケースが大半で、行政からの補助金をあてにする事業者も少なくない。

 30年ほど前から、いち早く移動販売事業を展開してきた高知県のスーパーの担当者は「点在する集落を回り、高齢者を中心に消費財を売るこの事業は、非効率で客単価も低く採算が合わない」と嘆く。販売人件費、食品ロス、車両の燃料代に維持管理費。年間1000万円単位の赤字を店舗の収益で補填する状況が続く。生活弱者を支える使命感から続けているが「県からの補助金が下りなくなれば、どうにも続けられない」と頭を抱える。

強みを持ち寄り リスクは分散

 シブヤの黒字の秘訣は事業運営主体の分割にある。商品調達は地元の商店に依頼。販売実務はパートナーと呼ばれる個人事業主に委託。車両は本業を活かし、パートナーへリース販売を行うことで初期費用を軽減、起業ハードルを下げた。シブヤは事務局として販売ルート開拓、運営ノウハウ提供と車両製作を担当し、売上は3者で分ける。徳島の事業モデルを参考に、一括運営が定石の事業を因数分解し、異なる特性の者同士が組むことで、コストの分散に加え仕入れの手間や在庫リスクを縮減。経費面から採算性を向上させた。

 黒字のカギは1軒1軒を訪れる販売手法にもある。運営に先立ち、事務局は近隣に商業施設のない地域の家を訪ね回り、約1000軒をリサーチ。販売実務を切り離し、調査に専念できる環境を整えたことで可能となった。

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