チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年12月27日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 南京事件の核心に迫ると思しき衝撃的な史料。そのひとつが、蒋介石の「指示」を表わす文書である。蒋介石は、日本軍が南京に入城する直前、城内から逃れたが、そのときに、「ここで日本軍による大虐殺があったことにしよう」との指示があったという内容だ。

 これらの事柄は、東中野氏が、台北の国民党党史舘で発見した極秘文書『中央宣伝部国際宣伝処工作概要1938年~1941年』に残されていると、氏の著書、『南京事件-国民党秘密文書から読み解く』(草思社)に記されている。

 実は、この文書発見以前から、南京陥落の後、120名近くの記者が日本軍とともに南京に入城したにもかかわらず、朝日をはじめとする当時の新聞報道、記者らの証言のなかで、虐殺事件の片鱗すら語られていないのはおかしい、事件はなかったのではないか、という主張はされていた。この主張が、中国側の資料からも裏付けられたという点は大きいのではないか。

市民の姿をした兵士を撃ったことは「虐殺」ではない

 筆者は長らく、南京事件について個人的に興味を抱いてきた。それは、1997年、故アイリス・チャンという中国系女性が著した『ザ・レイプ・オブ・ナンキン』という本が、全米で大ベストセラーとなったことをきっかけとした興味であり、数年前にはカリフォルニアで生前のチャンに近い人物に会い、彼女の死の直前の様子を取材したこともある。

 その興味と経験が昨年、とある仕事に結びついた。昨年2月、名古屋の河村たかし市長が、姉妹都市である南京市の使節団との会談の席で、「(いわゆる)南京事件はなかったのではないか」と発言して物議を醸した件にまつわる仕事であった。騒ぎが一段落した夏頃から数回にわたって河村氏から話を聞き、「騒動」の経緯をまとめる機会を得たのだ。

 このときの「河村南京発言」の正確な内容は、「事件(虐殺)はなかったのではないか。通常の戦闘はあったが」である。虐殺ではなく通常の戦闘行為――これも南京事件を考える際のもう一つの重要なポイントである。

 実は河村氏、例の発言以前、名古屋市長になる前の衆議院議員時代から「南京」について、ひとかたならぬ思い入れをもっていた人だということはあまり知られてない。歴史家から話を聞くだけではなく、元日本兵を訪ねての聞き取り調査まで独自に行なって、野党議員だった小泉政権当時、独自の調査の結果を踏まえ、「南京事件」に関する政府見解を具体的に質す、質問主意書を出してもいる。

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