しかし、米国経済の姿とシェール革命の恩恵から、中国が米国の経済覇権を脅かす時期はかなり先になりそうだ。
実は強い米国の製造業
日本が米国の経済覇権を多少脅かした80年代後半、日本式経営が持て囃された。マサチューセッツ工科大学のプロジェクトチームが、米国産業の病の根源を問うとして日米欧の競争力を比較し、そのレポートを「Made in USA」として出版するほどだった。日本でも翻訳本が出版された。
確かに、自動車などにおいては、米国市場では日本車が大きなシェアを占めるようになった。しかし、米国の製造業が疲弊しているとはいえない。GDPに占める製造業の付加価値額の比率を見ると、米国ではそのシェアは下落している。70年の16.4%は、80年に15.1%、90年に13.8%、2000年には13.4%、いまは13.2%だ。しかし、これは米国の製造業が衰えたことを示しているわけではない。金融、サービスなどの他の産業が大きく伸びたため製造業の比率が低下しているだけだ。
日本ではGDPに占める製造業付加価値額のシェアは20.4%、ドイツ20.6%、中国35.4%だ。3ヵ国と比較すると、米国の製造業の力はないように思えるが、製造業の作りだす付加価値の絶対額でみると、米国の製造業の規模は圧倒的に大きい。金額は伸びているのだ。表に米日独中4ヵ国の12年の製造業の付加価値額を示した。世界の工場と言われる中国の追い上げを受けているものの、付加価値額では、依然として米国は世界一の製造業を保有している。所得水準が高い3億人以上の市場を持つことを考えれば、製造業が市場の近くで生産を行うのは当然かもしれない。
この米国の製造業の力はシェール革命によるエネルギーコスト低下により強化されている。
エネルギーコストが低位安定している米国
リーマンショックは、世界の製造業に大きな影響を与えた。先進国の製造業は軒並み、売り上げと収益を落とすことになった。米国も無論例外ではない。図‐2に、リーマンショック後の09年からの米中日独の製造業の付加価値額の推移を示している。リーマンショックの影響を大きく受けた先進国の製造業のなかで、日独との比較では、着実に順調な回復を見せているのは米国だ。