World Energy Watch

2013年5月31日

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 米国産シェールガスの日本向け輸出が認められた。喜ばしいことだが、一部マスコミが伝えるように「これで日本向けの天然ガス価格が下落する」か、どうかは、まだ不透明だ。液化設備などに巨額の設備投資を必要とすることから、日本の輸入価格は米国内価格の倍以上になることは確実だ。

 日本では米国のシェールガス革命により、日本も恩恵を受けると考えている人が多そうだが、欧州では恩恵を受けると考えている人は、まずいないようだ。逆に、米国産業界だけが競争力を付け、欧州の産業界は苦境に追い込まれると考えている人が圧倒的に多い。米国のシェールガス革命は米国以外の国にとっては正に「悪夢」なのだ。欧州35カ国の経済団体が加盟する「ビジネスヨーロッパ」の主張を読むと何故悪夢なのか、よく分かる。

米国だけが競争力を付け、
欧州も日本も太刀打ちできなくなる

 3月14日、15日開催された欧州連合(EU)の首脳サミットで、欧州の競争力と経済成長に係る構造的な問題に関するテーマ別の会合を開催することが決まった。エネルギー問題を主に議論するサミットは5月22日に開催されることが合意されたが、このサミットに先立つ5月14日に、ビジネスヨーロッパの事務局長がEU当番国のアイルランドの首相にエネルギー問題に関する書状を提出している。

 ビジネスヨーロッパのホームページでもエネルギー問題に関する見解が公開されているが、提出された書状の内容はさらに細かい。その内容は以下の通りだ。

 「5月22日のエネルギー政策に関する欧州委員会の会合に先立ち、成長、雇用、競争力を作りだすEUの努力を蝕む高いエネルギーコストに関する大きな挑戦に注目したい。米国のシェールガスの開発により欧州では将来の産業界での投資に負の影響が生じることを欧州各国政府首脳は認識すべきだ。欧州のコンサルタントに依頼し欧州のエネルギーと気候変動政策の分析を行った。その注目点は次の通りだった」。

・欧州の産業向け電力料金は米国の産業州の1.5倍から3倍になっている。過去10年間で料金の差は拡大している。同様に石油、ガス価格の価格差も拡大した。

・電気料金価格差の一部はシェールガスの価格により説明可能。しかし、再生可能エネルギー(再エネ)政策、炭素価格、電力市場の構造が欧州の料金上昇の大きな理由。

・再エネ支援策がエネルギー価格に大きな影響を与えている。11年の欧州での再エネからの電力への純支援額は370億ユーロであり、最終需要家の負担額は1MWh当たり13ユーロ。20年までに500億ユーロを超える。

・欧州の排出量取引制度は既に電力価格上昇に大きな影響を与えている。仮に将来排出枠価格が上昇すれば、電力の卸価格に与える影響は大きくなる。

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