ウナギもマグロも消えていく
動かぬ水産庁尻目に火が付くか
“消費者運動”


WEDGE編集部 伊藤 悟 (いとう・さとる)

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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2013年は日本の水産資源減少が白日の下に晒された年であった。シラスウナギ(ウナギ稚魚)は銀価格を超える1キロ約300万円で取り引きされ、12月には中西部太平洋まぐろ類委員会が14年からのクロマグロ未成魚の漁獲枠削減を決めた。危機的状況にある魚は少なくない。

 「日本は乱獲漁業を放置し、魚を減らしてきました。水産庁の仲間うちでは事態の深刻さを認識していましたが、発信してきませんでした」

 自責の念に駆られている元水産庁職員が語ってくれた。「水産庁にも現状を憂える人は多いですが、業界団体、族議員が睨みを利かせており、改革は簡単ではありません。改革には外圧が必要で、消費者の声、つまり世論が最も有効な外圧です」

 消費者が乱獲魚を購入しなければ、乱獲は自ずと減る。消費者の関心が高まれば、票になると踏んだ政治家が指揮をとって政治主導の改革へ繋がる。水産資源を守るためには「消費者意識の改革」がカギとなる。

 築地市場でマグロの仲卸業を営み、水産資源の減少を肌で感じてきた生田與克さんは、乱獲でなく、持続可能な漁業で獲った水産物に「Seafood Smart」というシールを貼付してスーパーで販売する活動を昨年11月から始めた。水産資源減少の現状などについて出題される「魚食スペシャリスト検定」にも取り組んでおり、「1人でも多くの国民に現状を知ってもらいたい」と話す。

欧米から遥か遅れる日本

 海外に目を向けると、こうした活動の有効性が分かる。1997年に世界自然保護基金(WWF)と、英蘭ユニリーバ社が設立した海洋管理協議会(MSC)は、漁業について、資源の持続可能性、生態系への影響、漁業管理システムに関する基準を策定しており、基準を満たす漁業には「MSC認証」が与えられる。認証された漁業で獲られた製品には「MSCエコラベル」を表示することができる。

 現在ビンチョウマグロの漁業でMSC認証取得を目指しているヤマサ脇口水産グループの脇口光太郎社長は「欧米ではMSCの認知度が高く、既に取得済みのハラル認証(イスラム法認定の商品)と並びグローバル展開を考えているわが社にとって必要な武器となります」と話す。

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