安倍首相の靖国神社参拝
中国の軍部の反応は


小原凡司 (おはら・ぼんじ)  東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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「安倍首相が本日11時半に靖国神社を参拝する」という電話を受けたのは、2013年12月26日午前10時30分頃だ。可能性を指摘する報道は事前にあったものの、実際に安倍首相が靖国神社に参拝するとは思っていなかった。

「日本右傾化」というストーリーの中で

 筆者が北京の日本大使館で防衛駐在官として勤務していた2005年、当時の小泉首相の靖国神社参拝は、やはり中国の反日感情を爆発させ、大規模なデモが生起した。日本食レストランを破壊しながら行進し、1万人で日本大使館を囲んだのだ。1万人に囲まれると、大変な圧迫感を覚える。中国にとって、日本の首相による靖国神社参拝が、「日本が歴史を歪曲するもの」であるという意味は変わらない。それでも当時の小泉首相の靖国神社参拝と、今回の安倍首相の靖国神社参拝には、やはり大きな違いがある。

 実際には、首相の靖国神社参拝だけで、対日抗議活動が激烈になる訳ではない。当時も、日本の国連安保理入りの話が重なって、強い日本への抗議となったのだ。それでも、小泉首相の靖国神社参拝は、他の歴史認識にかかわる要素に結び付けられることはなかった。

 一方で、今回の安倍首相の靖国参拝は、中国が言う「日本右傾化」のストーリーの中に位置付けられている。単発の事象ではなくなっているのだ。2012年9月の日本政府による尖閣諸島購入以降、日本の政治家の発言、安倍首相の自衛隊でのパフォーマンス、国会議員の靖国神社大量参拝、無人機撃墜検討、果ては「いずも」の進水まで、日本右傾化・軍国主義化の証とされてきた。

 中国には、人民解放軍の一部を含め、「対日開戦やむなし」と主張するグループがいる。日本は、こうした対日強硬派を利する材料を与え、彼らに「日本右傾化・軍国主義化」のストーリーを作り上げる手伝いをしてしまったのかも知れない。日中双方で、関係改善を主張する声が小さくなっているように感じる。強硬な主張を展開する人も、戦争になるとは考えていないかも知れない。しかし、勢いの良い主張に他の声がかき消され、理性的な議論ができなくなって、過去の戦争は止められなかった。

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著者

小原凡司(おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

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