河野太郎と朝日新聞
不正確な脱原発論の共通点


山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)  常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

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1月20日付朝日新聞記事、『原発迷走⑧揺らぐ「低コスト神話」』を読んで、あまりのご都合主義の説明に驚いてしまった。いくら原発が嫌いでも、電気の知識がない読者を騙すような記事を書いて良いわけはない。

 同じことは河野太郎衆議院議員(以下敬称略)の「脱原発論」にも言える。文藝春秋新春特別号の「『小泉脱原発宣言』を断固支持する」で河野が述べていることは、事実をかなり曲げている。これも電気の専門家でデータを知らなければ、間違いが分からない書きぶりだ。

 朝日新聞と河野太郎、その議論の進め方の共通点は何だろうか。不正確な度合いはどちらがひどいだろうか。

原発の送電コストが高いという嘘

 朝日の記事では、まず原発の立地は遠く、東京近郊にもある火力発電所との比較で送電鉄塔など設備の費用がかかり、送電コストが高くなるとしている。これを元東電社員に語らせる形で書いているが、この指摘は間違いだ。

 まず、東京近郊にもある火力設備と比較し原発は送電設備建設費用が高いとあるが、東京近郊にある発電所は石油、液化天然ガス火力が主体だ。石炭火力は、環境問題、外航船受け入れ設備などの理由で近郊には建設されていない。電力会社の石油、LNG、石炭火力の稼働率を比較すると、震災前は表の通りだった。いくら石油火力からの送電線が短くても、稼働率が原発の3分の1しかなければ、距離当たりのコストは3倍になる。原発の3分の1の距離しか送電しなくても送電の費用は同じだ。

 さらに、朝日が完全に無視している数字がある。1カ所当たりの発電能力だ。原子力発電所は1カ所に集中して建設されている。例えば、東電の原子力柏崎刈羽は821万kWある。石油火力最大の鹿島は440万kW、LNG最大の富津は400万kW、石炭最大の常陸那珂は100万kWだ。関電は若狭地区に977万kWの原発を集中して保有している。1カ所当たりの発電規模が大きな原発は火力に比べ、1kW時当たりの送電料金は有利だ。単位当たりの送電コストを考えれば原発の送電コストは安くなる。朝日の指摘とは逆だ。

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著者

山本隆三(やまもと・りゅうぞう)

常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

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