デフレと賃下げにより
ユーロ圏景気は底入れへ

日本がユーロ圏経済回復から学ぶことは大きい


中島厚志 (なかじま・あつし)  経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

中島厚志が読み解く「激動の経済」

混迷の度合いが増す一方の経済情勢。一歩先すら見渡せないこの時代を生き抜くためには、情報の感度、取捨選択能力、読解力が問われます。テレビ東京系「ワールド・ビジネス・サテライト」のコメンテータでもお馴染みでした、中島厚志氏が「激動の経済」を読み解きます。

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ユーロ圏経済が底入れしている。2013年10-12月期の実質GDP成長率は1.1%(前期比年率)と、2011年以来の3四半期連続プラス成長となった(図表1)。そのユーロ圏経済を中心的に牽引しているのがドイツ経済だ。10-12月期経済成長率は1.5%で、ユーロ圏全体の成長率を上回る。また、ユーロ圏経常黒字も、ほとんどをドイツ一国で積み上げる計算で、名実ともにユーロ圏経済を支えている。

(図表1)ユーロ圏:主要国の実質経済成長率
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 しかし、このドイツ経済が南欧諸国の景気回復を厳しいものとしている。ドイツ経済が好調で、貿易黒字を増やせば増やすほど、ユーロ通貨が強くなってユーロ圏全体の輸出は伸びにくくなる。

 何より、単一通貨が適用されているユーロ圏では、域内競争格差を為替相場で調整することはできない。ギリシャ等の債務危機国が、勝ち組ドイツとの競争力格差を縮小させ、財政赤字ではなく民間活力で成長する経済体質を作るには、事実上賃下げや財・サービスの値下げ(=デフレ)でコスト競争力を上げるしかない。

 今ユーロ圏経済で起きているのはこのような動きだ。景気回復と言っても、ギリシャ等経済再生を図る国にとっては決して楽な回復ではなく、2014年のユーロ圏経済は、好調なドイツと、厳しい回復を図る国々に二極化される展開が続くこととなろう。

 しかし、この展開を乗り越えていくことがユーロ圏の経済体質を強くする。円安や積極的な財政金融政策で景気が回復している日本にとっても、ユーロ圏経済の展開は他人事ではない。

二極化するユーロ圏経済

(図表2)ユーロ圏:主要国失業率の推移
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 ユーロ圏経済は底入れしつつあるが、その二極化はいくつかの経済指標で確認することができる。例えば、ユーロ圏の失業率は最悪水準が続いているが、とりわけギリシャ、スペインの高失業率は景気底入れにあっても大して改善に転じていない(図表2)

 ユーロ圏各国の物価動向にも大きな違いがある。いずれも債務危機国であるキプロス、ギリシャは厳しいデフレとなっている(図表3)。スペインもデフレで、イタリア、ポルトガルといった他の債務危機国でもディスインフレ傾向が著しい。

(図表3)ユーロ圏:主要国消費者物価上昇率の推移
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「中島厚志が読み解く「激動の経済」」

著者

中島厚志(なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

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