うつ病蔓延時代への処方箋

2014年3月27日

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 前回は、ロンドン大学キングスカレッジの宗未来医師とライフバランスマネジメント(LBM)研究所の渡部卓代表による共著論文「未病うつ(Non-clinical depression)に対する低強度メンタルヘルス・サービスにおける積極的な民間活力導入の提案:趣味を実益に変えて、医療負担から戦略的事業へ」(http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/14010013.html)について、大うつ病に至らぬうつ状態を「未病うつ」と表現した経緯や、未病うつを認識しない経済界の状況、抗うつ薬中心である日本のうつ病治療の心許なさ、などを指摘した論文内容について触れた。今回は、未病うつに対し、どのような取り組みをすべきなのか、代替療法などについて語ってもらった。

前篇はこちら:http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3677

未病うつ対策に向けた明確な予防策はない

―― 一般的に抑うつ状態に気がつけば、医者に行き薬をもらうことしか考えつきません。これだけではないのでは、とくに未病うつを考えて予防的な対策が必要になるという趣旨のことが論文で指摘されています。

渡部:関沢さんの方が詳しいと思いますが、会社を欠勤したり会議をサボったり、ボーとしていたりするアブセンティズムについてハーバード大学から研究論文が出ていました。アブセンティズムによる生産活動の低下、経済損失は小さい数字ではないという論文です。日本ではこのような発想が少なくて、とにかく薬物療法にテーマが向ってしまいます。

 うつ病を患う人は増加しているというより新たな患者が止まらない、という感覚でとらえています。増えているという意味では同じですが。だからこそ予防していくことが大事であると企業も認識しています。ではどうするのか。具体策として取り組んでいるのは、研修会を開く、ストレスチェックや少しでも早く面談するぐらいです。その前にとるべき行動はないのでしょうか。健康経営を社風にしていくという考え方が必要だと思います。

LBM研究所 渡部卓代表

関沢:予防の重要性はしばしば指摘されますが、うつをどうしたら予防できるかについての決め手はまだないと思います。うつになった人々の多くは、何らかのストレスがきっかけになっていると思いますので、ストレスをなくせば予防できるでしょうが、社会で生きていく上でストレスを避けることはできないでしょう。ストレスがあることを前提として、うつを予防する効果が研究で明らかになっているのは、認知行動療法・対人関係療法・運動・瞑想ぐらいだと思います。しかも、これらでさえ、完全に予防できるわけではなく、こうした取り組みをしている人々はそうでない人に比べると、うつになりにくいといった程度の意味です。こういう状況なので、うつ病の予防に向けて、企業に対策を強化せよ、と言っても限界があるでしょう。どうしたらうつを効果的に予防できるのかというハウ・ツゥについての研究がもっと必要だと思います。

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