米国の「地政学的先細り」

世界的に後退する存在感


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米ハーバード大学のニール・ファーガソン教授が、2月21日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙に「米国の世界的後退」と題する論説を寄稿し、オバマ大統領の外交・安保政策が米国の世界での役割後退につながっていると厳しく批判しています。

 すなわち、FRBのバーナンキ議長が「先細り」に言及したところ、新興国の株や通貨が下がった。しかし、もっと重要な意味があるのは、米国の「地政学的先細り」である。米国の国家安全保障戦略に根本的な変化が起こっており、世界に影響を与えている。

 オバマ大統領は、2月19日ウクライナでの虐殺について「一線を越えれば、その結果がある」と警告したが、誰も真剣に聞かなかった。シリアでは、「化学兵器使用はレッドライン」と言いながら、それが越えられた時、何もしなかった。

 米国の「地政学的先細り」の起源は第1期目の混乱した外交政策決定にある。イラクからの撤退は理解できるが、アフガンについては、増派をしたが、同時に撤兵の約束もした。「アラブの春」では、ムバラク追放を容認し、選挙後、モルシを支持し、その後、軍のクーデターを支持した。リビアでは限られた役割しか果たさなかった。シリアは大失敗であった。介入が有効な時に躊躇し、介入した時には効果がなかった。自由シリア軍に十分な支援を与えず、議会が賛成すれば空爆するとの空脅しはロシアに主導権を渡すことになった。もっと悪いことに、シリアの内戦はスンニ派とシーア派との宗派対立(「シリアとイラクのイスラム国家」とヌスラ戦線のようなジハーティストは反アサドであり、ヒズボラとイランのクッズ軍がアサド支持である)になっている。難民の洪水は、レバノン、ヨルダン、イラクの不安定化につながっている。イラクでは暴力が激しくなっている。

 米国の戦略の失敗は「大中東(Greater Middle East)」での死者の数に現れている。国際戦略研究所(IISS)によれば、2013年に、75000人以上が武装紛争やテロで死亡している。IISSがこういう計算を始めた1998年、紛争による死者の38%が「大中東」であったが、昨年は78%になっている。オバマ支持者は、戦争屋ブッシュに対する平和主義者オバマと言いたがるが、オバマの時の方が死者の数は増えている。

 オバマの戦略はどういうものなのか。1月、ニューヨーカー誌へのインタビューで、オバマはスンニ派とシーア派が殺し合うのは良くない、イランにより責任ある行動をさせ、湾岸諸国とイランとをバランスさせたらよい、と言っている。更にイスラエルがスンニ派諸国と非公式な同盟を作れば、今一つの均衡が出来る、と言っている。問題は、そういうバランス・オブ・パワーに関係国が何故協力しなければならないのかの説明がないことである。

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