この熱き人々

2014年6月11日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

人気の頂点を極めた漫画家から大学教授に転身。漫画を教えるという未踏の道を手探りで切り開き、今春には学長に就任した。かつて自らが少女漫画の常識を打ち破ってきたように、時代を揺さぶる力をもつ創造者の育成に全力を傾ける。

「描く」から「教える」立場に

 日本で初めて、そしてただひとつ大学で漫画を教育研究する「マンガ学部」のある京都精華大学は、鞍馬山に近い京の北の端にある。キャンパスには画材を抱えた学生や作品展の搬出入のトラックが行き交い、マンガ学部の階段の踊り場には卒業生の描いた巨大な作品が飾られている。学生たちがグループごとに共同作業をしている開放的な教室の中を通り抜けた先が、竹宮惠子教授の部屋だった。入口には暖簾。研究室というより、リビングのような敷居の低さが印象的である。

 古代エジプトを舞台にした愛と歴史のロマン「ファラオの墓」、少年たちの愛と性と死をテーマにしボーイズラブの金字塔といわれる「風と木の詩(うた)」、環境破壊で人の住めなくなった地球から宇宙へ散った人類の地球への思いを哲学的ともいえるスケールで描いた「地球(テラ)へ…」など数々の大ヒット作品を世に送り出した漫画家・竹宮惠子が、京都精華大学にマンガ学科が新設された時に教授として迎えられたのが2000年。マンガ学科がマンガ学部になって学部長、そして今年、学長に就任。大学で教鞭をとるようになってからすでに14年の年月がたっている。

 「大学漫画が華やかだった頃、大学に呼ばれて話をしたことがあって、漫画って教えられるものですかと学生から質問されて、即座に『いやそれは無理でしょう』と答えた覚えがあります。自分でそう言っていたにもかかわらず、自分が漫画家として苦労して乗り切りながら理解してきたことを若い世代に教えられるかなと、つい思っちゃったんですよね」

 思いがけない成り行きを心底楽しんでいるような突き抜けた笑顔で語る竹宮は、やはりアカデミックな学長の重々しさより、好奇心や探究心にあふれた漫画家の雰囲気を色濃く漂わせているように見えた。それがうれしくもあったが、中世モンゴルを舞台にしたSFロマン「天馬の血族」以来、竹宮の壮大なスケールの作品に出合っていない寂しさもあって、ファンとしてはちょっと複雑な気分も湧いてくる。

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