世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月16日

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 エコノミスト誌の4月8日付解説記事が、立法院を占拠した学生たちが退去に同意し、馬英九が安心したのは間違いないが、与党国民党には内部分裂の兆しが見え、中国との関係が冷却する恐れもある、と指摘しています。

 すなわち、立法院を占拠していた学生は、中国とのサービス貿易協定は交渉が秘密裏に行われ、また、協定によって中国による台湾の政治支配が強まる、と主張し、中国との協定を監督する法律の制定を要求していた。

 当初、馬政権は、学生の要求を一部受け入れ、立法院が中台間の協定締結について監督する法案に同意したものの、サービス貿易協定の発効前にそうした法律を制定することは認めなかった。ところが、その数日後に、王金平・立法院長(国会議長)が、法律が制定されるまでサービス貿易協定について審議しないと約束したため、学生たちは占拠終了に同意した。

 王は、直接立法院を訪れて学生に約束し、メディアが華々しく報道したが、その約束の内容は、馬政権のスタンスと大きく食い違う。王の発言は全く予期していなかった、と馬のスポークスマンは述べており、行政院(内閣)のスポークスマンも約束に同意していない。今後どうなるかははっきりしない。サービス貿易協定は、台湾の経済発展と地域貿易ブロックへの参加のために不可欠であるというのが政権の立場だが、協定を承認するよう馬が議員への圧力を強めれば、国民党の中で馬は孤立する恐れがある、と関係者は指摘する。

 馬と王は政敵同士であり、昨年9月に馬が王の辞任を要求し、国民党から追放しようとして、対立は決定的となった。3月に、裁判所は、王の党籍保持を認める判決を下している。王は今回の危機を解決して自らの威信を高め、2016年の総統選挙の前に国民党の指導権を馬と争うことを考えている、と東呉大学の劉必榮教授は指摘する。

 王が約束したように、監督法案がサービス貿易協定の承認の前に可決されれば、長引く議会での折衝、さらに、協定自体が破棄される可能性によって、馬と中国との信頼関係は大きく損なわれるだろう。中台が協定に同意してから既に9ヶ月が経っている。

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