2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月27日

 米外交評議会のエコノミーとレヴィが、5月16日付ワシントン・ポスト紙掲載の論説で、南シナ海での最近の中国の行動に対して、米国がレトリックだけでなく実際の行動を以て対応しなければ、米国の信頼は損なわれることになる、と述べています。

 すなわち、ベトナムが領有権を主張している水域での、中国による石油掘削には、単なる資源獲得のみならず、より本質的な二つの力が働いている。一つは、ナショナリズムである。掘削は、ベトナムの海岸から120海里、ベトナムの経済水域(EEZ)内にある、パラセル諸島近海で行われている。中国は、歴史的利用と実効的な主権の行使に基づく島への領有権を主張し、パラセルを1974年から占拠している。パラセルから後退することは中国の名声に打撃を与えるが、支配の強化は国内でのリーダーシップを強化することになろう。

 二つ目に、中国指導部は、南シナ海のシーレーンを支配したいという動機も持っている。年間5兆ドル以上の貿易品が南シナ海を通過し、それには、世界の海上輸送による石油貿易の約3分の1、中国の原油輸入の4分の3以上が含まれる。中国海軍は、中東の重要なシーレーンで米国の優位に挑戦したり、それどころかマラッカ海峡を支配する力もないが、南シナ海で海軍を行動させることにより、米国が中国向けの供給を阻止出来ないという、より大きな自信が得られる。

 さらに、中国は、軍の行動を原油開発という商業的動機で隠すことにより、反対を弱めようとしたのかもしれない。そうであるならば、その策略は、功を奏していない。中国の動きは、地域の中での強い関係が外交政策の最優先事項である、との中国の主張を損ねている。南シナ海におけるベトナムとの資源共同開発に関するワーキング・グループの対話への、中国のコミットメントにも疑問符が付く。

 米国は、領有権紛争では特定の立場を取らず、双方に平和的解決を求める、と言ってきた。これは十分ではない。米国は、中国のブラフに挑戦すべきであり、真の利害関係を明確にすべきである。米国とASEANは、係争領域における一方的な領有権主張を認めることを拒否するという点で、統一戦線をとるべきである。

 さらに重要なことは、米国は、レトリックとしての立場に生命を与える用意をしなければならないということである。米国は、ベトナムを防衛する条約上の義務を負わないが、米国の対アジア・リバランスは、米国が太平洋の安定の主たる保障者の役割を果たすのが前提である。中国の行動は、それに対する挑戦である。


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