不況を生き抜く管理会計

2009年6月12日

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田中靖浩 (たなか・やすひろ)

公認会計士

1963年生まれ。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒。外資系コンサルティング会社などを経て独立開業。現在、田中公認会計士事務所所長。経営コンサルティングからセミナー、新聞・雑誌の連載などに幅広く活躍中。最近は落語家・講談師などとコラボによるライブイベントを展開中。日本公認会計士協会東京会・経営委員会委員長、経済産業省・財務管理人材育成システム開発事業審議委員、東京都立産業技術大学院大学「ものづくり経営人材育成講座」検討委員・講師などを歴任。著書は、『右脳でわかる!会計力トレーニング』、『経営がみえる会計』、『12日間速習プログラム決算書トレーニング』(以上日本経済新聞出版社)など多数。数点は海外にも翻訳出版されている。

 この連載で値下げについて書き出してからというもの、世の中ではあらゆるモノ・サービスの値下げニュースが聞こえてくる。どうやらこの連載の内容は世間に伝わっていないらしい。これだけ「値下げで成功するのは難しい」ということを毎回書いているというのに・・・。

前回は、

■値下戦略の成功条件その1 : 「商品1個当たりの変動費が少ないこと」
■値下戦略の成功条件その2 : 「値下げによって販売数量(Q)が大幅に増加すること」

のうち、成功条件その2をクリアするのがいかに難しいかを「キャパシティの限界」という観点から説明した。企業には、人員、スペース、時間など、ビジネスを行っていく上でさまざまな制約条件が存在する。値下げを行ってお客さんが押し寄せたとしても、なかなか「大幅な販売数量増加」を達成することはできない。

落語家も真剣に悩むキャパの限界

 先日、友人の落語家さんと「キャパシティの限界」という話で盛り上がった。ビジネスとは対極のところで生きているように見える彼らだが、「キャパシティ」という言葉は日常的に使っているそうだ。彼らは「キャパ」という言葉をホールの座席数の意味で使っている。「あのホールはキャパ300人」というふうに。

 若手の落語家さんの場合、自分でホールを借りて独演会を行うことが多い。当然そのキャパは重大な問題になる。というのも、あまり安くて狭いホールを借りてしまうと、満員御礼でお客さんを断ることになる。しかし、それを恐れてキャパの大きいホールを借りてしまうと、借り賃が高くつく上に、場内がガラガラになる心配をしなければならない。やっぱりホールがある程度埋まっていないと空気が盛り上がらないそうだ。

 かくして、どれくらいのキャパのホールを借りるかは彼らにとって悩みの種になっているようだ。「壁が可動式になっていて、定員を変えられるようなホールはないですかね・・・」と真剣に語っていた。貸ホール関係者の皆さん、どうか検討してあげてください(笑)。

旅行会社の成功を阻むお客さんの事情

 キャパシティの上限というのは「値下げによって販売数量(Q)が大幅に増加すること」という値下げの成功条件を阻む大きな壁である。しかしそれはあくまで企業側の事情にすぎない。お客さんのほうにも値下げしてくれたからといってたくさん買うわけにはいかない事情がある。

 ここから「お客さんがたくさん買わない事情」について考えてみることにしよう。

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