中国メディアは何を報じているか

2014年7月1日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 中国がベトナムとの領海係争を抱える海域で石油掘削を強行してベトナムの猛反発を招き、中越関係はここ数年で最悪の状態になっている。中国の石油掘削は日本でも注目され、なぜこの時期に中国が作業を強行するのか、様々な分析がなされている。石油業界を中心とした資源利権グループが背後で暗躍しているという指摘(5月19日、石平氏記事)は説得力あるが、中国の当事者たちがどのように考えているのか、なぜこの時期に作業を強行しようとするのか日本での報道は少なく、当事者たちが何を考えているのかよくわからない。

 そこで今回は正に当事者の一人、中越係争地で石油掘削を強行する掘削リグ「海洋石油981」の設計責任者の主張と石油開発についての造船業界誌の解説を紹介したい。『艦船知識』誌7月号の巻頭言として掲載された「海洋石油981」の沈志平・総設計師による「南シナ海開発の防衛体系構築は一刻の猶予もならない」と「巨竜の進撃 日増しに激烈になる中国南シナ海での石油係争」という文章だ。

 『艦船知識』誌は巨大な軍需産業コングロマリットである軍工十大集団の一つ中国船舶工業集団公司が主管する大衆向け雑誌で、中国船舶工業総合技術経済研究院が刊行している。中国で刊行される100超の軍事雑誌のうちの代表的な雑誌でもある。

※前に中国の軍事関連雑誌は50誌以上と書きました。廃刊したものも含め約120の雑誌が確認できたので訂正し、お詫び申し上げたい。

* * *

【記事①『艦船知識』誌 巻頭言 2014年7期(総418期)(抄訳)】

 「海洋石油981」は我が国初の自主設計により建造された深水・半潜水式の石油掘削リグであり、南シナ海、東南アジア、メキシコ湾、西アフリカ等世界の石油・天然ガスが豊富な海域での掘削、探査作業が期待されている。「海洋石油981」甲板の最大積載量は9000tと3000メートルもの深海作業も可能で、先進的な掘削設備、自動化制御システムを配備しており、異なる水深での正確な定位測定を可能にした。安全で効率よく、環境にも優しい作業を保証していて第六世代半潜水式の掘削プラットフォームでは世界先端レベルを有する。また劣悪な海洋環境に合わせて設計されており、安定性と設計強度では200年に一度という風波にも耐えられるように設計されている。

 「海洋石油981」は現在、我が国・西沙諸島の「中建島」(ベトナムは「トリトン島」と呼称。台湾も領有権を主張:筆者)付近海域で掘削作業を行っており、中国海事局が作業地域に通告と航行警報を出した。企業の普通の作業にもかかわらず、ベトナム船から頻繁に野蛮な妨害を受けている。このため「海洋石油981」は世界中から注目を集めるようになった。

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