マグロ、ウナギに続き
漁業も“瀕死状態”の日本


WEDGE編集部 伊藤 悟 (いとう・さとる)

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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「マグロが消えた」と大間や壱岐の漁師が悲鳴をあげている。ウナギに至っては絶滅危惧種に指定されているが、これは氷山の一角である。日本では漁業そのものも限界に差しかかっているーーー。
  「大間のマグロ」に異変が生じている。「明らかにマグロが減っているんです。さすがにもう漁獲規制が必要だと思っています」(大間漁協の伝法隆幸さん)。大間は一本釣りやはえ縄漁が主な漁法である。

 「昔は200キロ以上のものがゴロゴロいたんです。今は小ぶりになり、数も減りました。漁師の生活は苦しくなる一方です」。獲れるだけ獲りたいはずの漁師が漁獲規制を求めるのは極めて稀である。「数年前では漁獲規制を自分たちが求めることになるとは考えもしませんでした」(伝法さん)。

 「数年前、壱岐のマグロが年末商戦でもっとも高い値をつけたのを覚えています」。築地でマグロの仲卸業を営む生田與克さんは話す。そんな壱岐からも悲鳴があがっている。

 「ここの漁師はほとんどみんな倒産状態なんです。漁協からの借り入れなどで何とか漁を続けていますが、来年も同じ状況だったら漁師を辞めざるを得ないかもしれません」。マグロ漁師の中村稔さんはそう話す。「これまで壱岐では漁師の長男に生まれると、漁師になるものと決まっていましたが、最近では、他の道を選ぶ家庭も多くなりました。このままでは漁師がいなくなります」と尾形一成さんは危機感を露わにする。

 壱岐の勝本漁協によると、2004年度は、150キロ以上のマグロが99本揚がっていたが、昨年度は13本、今年度は6月末時点で1本という悲惨な状況である。150キロ未満のものも激減している。

境港に水揚げされたマグロ。小ぶりのものが多い

 こうした現状に危機感を覚え、昨年10月に「壱岐市マグロ資源を考える会」を設立。政治家や水産庁、長崎県、消費者などに現状を訴えるとともに、全国各地の漁業者と連携を深めている。

 壱岐と対馬の間には七里ヶ曽根という天然の好漁場がある。ここでは網を使わずに漁をするなど、漁業者同士の話し合いにより資源を守ってきた。しかし、マグロが七里ヶ曽根にやってくる前に獲られてしまえば、どうすることもできない。自主管理の限界である。

 一方、鳥取県の境港では、大間1年分を超えるマグロを、巻き網を使って1日で水揚げすることもあり、全国的に問題視されている。主力の太平洋クロマグロの産卵場は、境港に近い日本海沖と南西諸島沖の2カ所にしかない。境港では、毎年産卵のために集まるマグロを巻き網で獲れるだけ獲っている。「海がやせ細ってきているのは分かっていますが、我々にも生活があります」。境港の漁業関係者はそう話す。

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