「われわれは、エネルギー史の大転換点にいる」。
扉を開けて真っ先に目に飛び込むのは、この一文である。
もともとエネルギーには多くの不確実性がともなうが、いまや「エネルギーの生産から消費にいたるまで、これまでにない避けることのできない問題に直面している。今こそ、エネルギーの未来について、すべてを包み隠さず語り合うときなのだ」。
三人の著者は、そう投げかける。
三人とは、ジャン=マリー・シュヴァリエ、パトリス・ジョフロン、ミッシェル・デルデヴェの各氏。いずれもフランス人で、ヨーロッパを代表するエネルギー専門の経済学者や、フランス電力公社(EDF)とその配電会社の部長歴任者である。
資源に乏しいフランス
「オイルはないが知恵はある」
本書は、パリ・ドフィーヌ大学の「エネルギーと第一次産品の地政学センター(CGEMP)」でおこなわれた研究と討論をもとに書かれた。研究者、エネルギー企業、フランスおよび外国の政策当局や専門機関と活発に意見を交換した、とある。
それだけに、幅広い視点から合理的に、エネルギーを取り巻く現実を整理し、未来への処方箋を提起している。
私はエネルギー問題を取材して海外の関係者に話を聞いてきたが、ヨーロッパでもとりわけフランスの、エネルギーに対する合理的でぶれない考え方には、共感するところが多い。
日本と同じく資源に乏しいフランスが石油危機後、「オイルはないが知恵はある」とうたって原子力技術開発を推し進め、電力輸出国となった事実ひとつとっても、日本が学ぶべきことが少なくないと思っている。
したがって本書は、フランス、そしてヨーロッパから見た世界のエネルギー情勢がリアルタイムで手に取るようにわかること、フランスの教訓は日本のそれとなりうることーーの2点で、「エネルギー革命の全貌」を知るのにうってつけのテキストといえよう。