オトナの教養 週末の一冊

2014年9月5日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 日立製作所という会社がここ数年でこんなにも変わっていたのかということを強烈に教えてくれる渾身の作である。日立という会社に正面から向き合った著者が、綿密かつ広範な取材で巨大企業の動きをビビッドに描いた。

良くも悪くも日本を象徴する企業だった日立製作所

 筆者(中村)は17年近く前、経済記者の駆け出しで株式市場を担当した時、兜町のベテラン証券マンから株のイロハを教えてもらった。その時、「日立製作所という会社は、良くも悪くも日本を象徴する企業。日立の株価の動きを見ていると日本経済の動きがつかめる」と助言をもらった。正直なところ、当時は意味がよくわからなかった。

 「多くの従業員を抱え、子会社や関連会社もたくさんある。総合電機メーカーと呼ばれ、多角経営を行っている日本企業の象徴」

 今思うとおそらく、ベテラン証券マンはそういうことを言いたかったのだろう。

 その助言はある時期までは当たっていたのかもしれない。しかし、とっくの昔に通用しなくなっていたことが本書を読むとたちどころにわかる。グローバル化の進展で経済を取り巻く環境が劇的に変わり、日立も例外なく影響を受け、日本経済というのがひとつの企業やイメージで象徴されうるものではなくなった。日々、スピード感を持って変化する対象を昔ながらのモノサシでとらえられるはずもない。

 日本を象徴していたような会社が、それまでのやり方では通用せず、巨額の赤字を計上して危機に陥り、まったく別のやり方でなければ復活できなかった。過去の経験や常識はもはや通じない時代に突入してしまったことを、皮肉にも日立が身をもって示した。

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