2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2014年9月19日

――親の反応は? 本書でも、「紙というメディアが、勉強には最もふさわしい道具という意識が、大人にある。子どもが黙ってノートに書いている光景を見れば、親は安心して、(中略)子どもがパソコンに向かって、マウスやキーボードで何やら画面を見ていると、ゲームや良からぬサイトで遊んでいるのではないだろうかと不安になる」とあります。

赤堀:全国の10校を選び、その学校の子どもたちに1人1台のタブレットを配布し、学習習慣や学力にどのような効果をもたらすかという実証実験をNTTと行いました。その実験では、タブレットをランドセルに入れて、家庭に持ち帰らせていたのです。

 最初の反応はおっしゃる通りでしたが、時間の経過とともにどんどん受け入れるようになっています。子どもがタブレットを持ち帰ると、親子のコミュニケーションが増加したり、持ち帰らない子と比較して自宅での学習時間が増加する、という実験結果も出ています。

――先生たちにとってのメリット・デメリットは?

赤堀:多くの教員にとってタブレットは新しいメディアなので、使いこなせるようになるまでは時間がかかります。その点では多少負担はあるかもしれません。しかし、あくまでも先生の仕事は「教えること」で、機器の操作ではありません。機器を使いこなすスキルがあがったとしても、授業の質が高まるとは限りません。もともとの授業力が基本です。道具として、うまく取り入れ、授業をデザインするかがポイントです。

 日本の先生は「教える」ことは上手ですが、子どもに「任せる」ことは苦手なように見えます。タブレットを用いた学習では、子どもたちが自分で調べたことをどう伝えるか、という能力が必要とされます。

 これがまさに日本の教育の課題です。日本は、小中学校時代の学力は世界でもトップクラスですが、大学はどうでしょう。世界大学ランキングセンターの2014年のデータによると、上位100位のなかに東大他、数校しか入っていません。これからの時代は、教えられたことを覚える学習だけでは通用しません。自ら情報をとりにいき、それをいかに伝えるかというプレゼン力が求められます。

 教育の究極のゴールは「教育しないこと」。もちろん基礎は大切ですし、一定の暗記などは必要となります。しかし、社会に出るとプレゼンテーションや企画力や論理力などが非常に重要な要素です。どの資料を使えば人を惹きつけられるか、どのような論理構成で話せば伝わりやすいか…。そういったことを学ぶのに、タブレットは適したツールだと思います。


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