電車の中で、幼い子がタブレットに夢中になっているのを何度か見たことがある。おそらく直感的に操作することができるので、子供でも大人が思っている以上に簡単に扱えるのだろう。それならば勉強にも利用しようとなりそうだが、いざ使うとなると多くの大人は眉をひそめるのではないか。勉強には紙以外あり得ないと…。実際には、紙とタブレットやパソコンではどのような学習効果や意欲に差が出るのか。『タブレットは紙に勝てるのか』(ジャムハウス)を上梓した、白鴎大学教育学部教授・赤堀侃司氏に話を聞いた。
――タブレットが一般家庭にも普及し、教育現場でも取り入れられているとのことですが、そのような流れの中でこの本を執筆された動機を教えてください。
(赤堀侃司、ジャムハウス)
赤堀:私の専門は教育工学です。メディアと学習の分野においては「紙との戦い」を繰り広げてきました。これまでメディアと学習の分野では、紙が最強の学習媒体として絶対的な存在でしたが、徐々にパソコンやタブレットの普及が進んでいます。しかし、学習にどのような影響を与えるのかなどの認知研究や実証的・実践的研究は極めて少ないのが実情です。そこで、様々な実験から、「紙とパソコンとタブレットはどこが異なり、どのような効果があり、どんな点で劣っているのか」という疑問に答えたいと思い、執筆しました。
――ずばり、教育現場にタブレットを導入するメリットは?
赤堀:タブレットには触れたくなる、操作したくなるといった誘発性(アフォーダンス)があり、タブレットを通じて学習意欲を高める効果があります。同じ内容を学習する際、紙を眺めているだけでは飽きてしまう子も、タブレットでは学習意欲が高まることもあります。いわゆる「勉強ができる子」は、紙媒体でも「我慢して」学習に取り組むことができますが、それができない子どもたちには、学習意欲の向上や動機づけへの効果が見られます。
また、勉強ができる子も、タブレットの利用によって思考力や表現力が全体と比べて高いという結果も出ています。
私のゼミで、学生たちが指導案を作成する際、タブレットを利用してアプリを取り入れた授業を提案しました。たとえば、人体の学習で、臓器を体の正しい位置にはめ込んでいくツールは、見た目にもわかりやすく、実際に自分でタブレットを操作することで子どもたちの関心も高まっていくと思いました。