原発事故を起こした日本の“真の役割”
日本が開発進めていくべき「超安全炉」


岡本孝司 (おかもと・こうじ)  東京大学大学院工学系研究科教授

1961年生まれ。三菱重工、テキサスA&M大学客員助教授等を経て、2004年より現職。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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安全性が高く安定的なエネルギー供給を可能にする技術の研究開発が必要だ。「超安全炉」は国内だけでなく、海外への輸出戦略商品にもなり得る。

 原子力発電所というと、軽水炉が一般的であるが、安全性をより高めた様々な特性を有する原子炉が開発されてきている。例えば、高温ガス炉、トリウム溶融塩炉、進行波炉などである。

 高温ガス炉は、セラミックスで覆われた微粒子燃料を用い、核分裂の発熱をヘリウムガスで冷却する。ウラン、プルトニウム、トリウム、MOXなどが燃料となる。最大の特徴は「固有の安全性」で、万一、電気が無くなるなどして制御できなくなっても、物理現象により自動的に安全が確保される。

 原子炉の安全性は「止める」「冷やす」「閉じ込める」により達成される。軽水炉は制御棒を挿入して「止める」が、高温ガス炉では、これに加えて、物理現象で担保する。万一制御棒が挿入されなくても、負のフィードバックと呼ばれる物理現象で自動的に止まるのである。2010年には、茨城県大洗町にある高温ガス炉実験炉において、制御棒を挿入しない実験が行われ、自動的に止まることが実証されている。

 次に「冷やす」だが、軽水炉は多くのバックアップシステムで、事故時に原子炉に水を供給する仕組みを備えている。高温ガス炉もこれを備えているが、万一バックアップが全て止まっても、物理現象である輻射(ふくしゃ)伝熱により炉心が冷却される。発熱量があまり大きくないことも理由の一つである。

 燃料は直径0.9ミリの球状で、セラミックス(シリコンカーバイド)により覆われ、放射性物質を閉じ込めている。セラミックスは高温でも安定しており、事故時にも燃料が溶けるまで、温度が上がることがない。「閉じ込める」も物理的に達成されている。

 福島第一原発事故のように津波で電気が全て使えなくなるような事象に陥っても、物理現象によって、確実に安全が担保される安全を最優先した原子炉なのである。

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「WEDGE REPORT」

著者

岡本孝司(おかもと・こうじ)

東京大学大学院工学系研究科教授

1961年生まれ。三菱重工、テキサスA&M大学客員助教授等を経て、2004年より現職。

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