再生可能エネルギー接続保留は誰のせい?
国会の責任を問う


朝野賢司 (あさの・けんじ)  一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総
合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所
社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

エネルギー問題を考える

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 電力5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)が再生可能エネルギー発電設備の電力系統への接続申込みに対する回答を保留したことで波紋が広がっている。回答保留を受けて、政府が掲げる再エネ最大限導入に反するといった意見があるようだ。

本当の責任者を問う

 しかし、そもそも我が国のFITの破綻が不可避であることは、2012年7月の実施前からわかっていた。この直接的な原因は、FITの買取価格が高すぎたこと、そして買取価格の適用時期が設備認定の時点にあったことにつきる。つまり、制度設計の問題である。

 こうした制度設計がされた責任は、買取価格の査定能力が欠如した調達価格等算定委員会(以下、調達委)、投資環境整備に偏った政省令を作成してきた資源エネルギー庁(以下、エネ庁)、そしてFIT法の原案にはあった上限規定等の効率性の観点を修正案でそぎ落とした立法の不備(国会)にある。

 このように書くと、制度設計の問題なのだから、FITを修正し、改善を図っていけば良いのではないかという意見もあるだろう。しかし、査定能力に信頼が置けないままFITを続けることは難しいし、既に余りにも高くつく過ちを犯している。

図1賦課金見通し 拡大画像表示

 我が国FITでは直近(今年6月末)の認定分7178万kWが全て運開した場合の年間賦課金額は2.7兆円、買取期間は20年間等の長期に渡るためその総額は50兆円を超える(図1)。加えて認定分に遡及した買取価格の変更等の制度修正は極めて困難である。かつてドイツ・シュピーゲル誌は「太陽光発電は、ドイツ環境政策の歴史で最も高価な誤りになりうる」と批判したが、遡及措置が困難であることを考えると、ドイツを超えて、「世界の環境政策の歴史で最も高価な誤り」となることが不可避にあると言えよう。

 政府が掲げる「再エネの最大限導入」は、いくら高くても何でも買い取ることではない。改めて、出来るだけ少ない費用負担で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返ることが必要である。具体的には、FITを廃止し、入札等の競争原理を用いた制度による仕切り直しが求められている。

査定能力がない調達委員会

 FIT実施に当たり、その最大の論点の一つは買取価格の設定である。我が国では、国会同意人事に基づく有識者5名による調達委が、再エネの種別・規模別等で16種類に分けて、「効率的な供給を行う場合に通常要する費用」に「適正な利潤」を加えて算出した(FIT法3条2項)。買取価格は最終的に経済産業大臣が決定するが、その際に調達委の意見書を尊重することが規定されている(同3条5項)。

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「エネルギー問題を考える」

著者

朝野賢司(あさの・けんじ)

一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総
合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所
社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

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