中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年7月9日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 景気は底入れしつつあるものの、雇用情勢は悪化しつづけている。つい先日発表された5月の失業率も前月比+0.2%増えて5.2%となり、過去最悪の5.5%に近づきつつある。また、求人減と求職増の両方から求人倍率を押し下げ、5月の有効求人倍率は0.44倍と過去最低を更新している。そもそも、5月には、就業しなくなった人々の多くが非労働力化しており、もしこれらの人々が全て失業者として登録していたとすれば、失業率は5.7%になった計算でもある。

上昇する完全失業率(季節調整値)          (出所)労働力調査

 昨年末から今年の初めにかけて、非正規雇用者の解雇増が大きな話題を呼んだ。非正規雇用者の中には、解雇された途端に路上生活者とならざるをえない人もおり、それまでの雇用のセーフティネットに不十分な点があったことは事実であろう。もっとも、この時点では日本の雇用者総数は減少しておらず、全体としては失業増が本格化していなかったと言うこともできる。

いまは「派遣村」の時より深刻

 しかし、足元の状況は、この時と比べればはるかに深刻である。ここ数ヶ月、雇用者数は大きく減少しており、失業は非正規雇用者から正規雇用者へと、対象業種も一部の製造業企業からサービス業等非製造業まで広がってしまった。日銀の企業短期経済観測調査(日銀短観)を見ても、企業の雇用過剰感は一気に高まっており、製造業では過去最悪、全体でも最悪に近い水準にある。

 しかも、足元景気は底入れしたが、生産や稼働率などの水準は依然として際立って低い。損益分岐点を割ったままの企業が数多くある現状では、いくら景気が上向きに転じたとしても当面失業率上昇は止まりそうになく、来年にかけて失業率は過去最高を更新する可能性が強い。

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