2024年5月9日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月26日

 ある技術は、いずれは追いつかれるのが宿命ですから、全体として技術的優位を維持するには、最先端を維持するための不断の努力をすること、ライバルによる技術獲得を出来るだけ抑えることが肝要です。この点、米国の中国に対する軍事的優位は、前者については米国の国防予算不足から、後者については中国による技術盗取、特にサイバースパイから脅かされています。

 ただ、模倣者は、模倣の対象を技術面で追い越すことはありません。中国は、かなり早いスピードで追い付いてきていますが、まだ米国や日本を上回る新技術の開発は見られないように思われます。

 軍事技術の窃取については、通常のスパイか、サイバースパイかによらず、中国がそれに精を出すのは当然のことです。サイバースパイを含め、「軍事技術へのスパイ活動は違法である」という意識は、国際社会にはありません。

 サイバー空間での行動規範のようなものが出来れば良いのですが、それはかなり困難なことでしょう。米中作業部会で、民間の知的財産権侵害問題はとりあげるべきですが、武器技術のスパイに関して中国の行動を抑制する合意などは望めないと思われます。

 そういうわけで、武器技術に関する情報は、自分の力で防衛するように努力すべきです。論説が指摘する通り、日本も導入を考えているF-35などの情報をとられているとすれば、日本にとってもゆゆしき事態です。武器技術を守る方法は多くあり、設計情報はインターネットではアクセスできない閉鎖システム内に置くなどの、諸措置があり得ます。もちろん、自助努力を大前提としたうえで、日米での共同対処も不可欠であり、日米ガイドライン見直しの過程でも、この問題は重点的に取り上げられることになるでしょう。

 なお、この論説は、議会がこの問題に関心を持つべきである、と提言していますが、その点は、少しピントがずれているように思います。やはり、先端兵器技術の防護は行政府、特に国防総省がするべきことで、議会ができることは、実質的には、あまりありません。サイバースパイの阻止ではなく、最先端の技術開発に支障をきたさないよう、国防費の削減を押しとどめることが、議会のなすべき役割であると思います。

  
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