【緊急特集】エボラ出血熱

2014年11月25日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 毎日新聞の記事(11月23日付朝刊)によると、シエラレオネのフォディ・サウィ・ラハイ副保健相が20日、滞在先のローマで毎日新聞のインタビューに応じ、「封じ込め策を強化し、装備・人手と対策資金が十分に入手できれば、年末までに感染拡大にブレーキをかけることが可能になる」との見通しを示した。

 海外からの援助も、エボラの治療薬やワクチンの治験もまだ始まったばかり。日本ではあれほど続いたエボラの報道が途絶え、アフリカの流行状況がどうなっているのかもよく分からなくなってしまった今、このような突然の楽観的見通しに違和感を持つ人もいるかもしれない。世界保健機関(WHO)が、「西アフリカ3カ国での新たな感染者数は12月1日までに週間ベースで5000-1万人に達する可能性がある」と厳しい表情で会見したのは今からほんの6週間前、10月15日のことだった。

(写真:iStock)

 「エボラウイルスは人類が30年以上ものつきあいのある、決して新しくはない病原体。分からないこともあるが、すでに分かっていることも多い」

 米疾病予防センター(CDC)出身で、現在はワシントン大学の疫学講座で臨床准教授を務めるジョン・小林氏は、筆者の取材に対しそう答えた。小林氏は、アメリカでの最初のエボラ発症例が報告されたテキサス州出身の日系アメリカ人3世だ。小林氏の発言はシエラレオネのラハイ副保健相のメッセージと重なる。有効かつ必要なのは、分からないことを解明し、薬やワクチンを開発していくことだけではない。まずは分かっていることを十分に整理し、実行していくことなのだ。

 感染症危機に際して重要なのは、エビデンスと経験。小林氏のキャリアに耳を傾ければ、感染症が社会にどれだけ大きな一角を占める問題であるかを肌で感じることができる。小林氏は、アメリカのハンバーガーチェーン、「ジャック・イン・ザ・ボックス」から始まった病原性大腸菌O-157のアウトブレイクの際にはメディア対応をするスポークス・パーソンを務めた。地下鉄サリン事件の際には日本の、鳥インフルエンザの際にはWHOを通じて東南アジアのコンサルタントとして活躍した。直接の経験はないが、炭疽菌や重症急性呼吸器症候群(SARS)など、彼がCDCやワシントン州健康局勤務時代に起きたエピソードを聞くにつけ、感染症が単なる医療の問題ではなく、国家や国民の安全の問題であることが改めて実感できる。

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