大流行の「格差論」をどう読むか
ピケティの議論は狭すぎる


原田 泰 (はらだ・ゆたか)  早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

経済の常識 VS 政策の非常識

なぜ根拠に基づかない政策がまかり通り、本質的な問いが発せられないのか。少子高齢化、経済政策、財政赤字など、日本の戦後モデルに歪が生じているにも関わらず、政治はポピュリズムに陥り、50年、100年先の日本に責任を持てる判断を下していない。根拠・経済原則に基づく合理性という観点から、不合理な政策の問題点を指摘する。

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トマ・ピケティというフランス人の左派のスターが現れた。2014年3月に発刊された、698頁もある彼の著書 『21世紀の資本』“Capital
in
the
Twenty-First
Century”(Harvard University Press)が米国でベストセラーになっている。ニューヨークタイムズで特集が組まれ、辛辣なクルーグマンが「彼の知性が羨ましい」とまで賞賛している。マンキューやロゴフなど、共和党寄りの経済学者もその分析を評価している。

 余波は当然日本にも及び、この夏には、多くの経済誌が特集を組んだ。渋いフランスの書籍を出版してきたみすず書房が翻訳権を獲得し、山形浩生氏が英語版から大至急で翻訳し、先日12月8日、出版された。

 ピケティ教授のメッセージは単純で、それゆえに力強い。格差が拡大している。なぜかというと、資本の収益率がGDPの成長率よりも高いからだという。賃金はせいぜいGDPと同じ率でしか伸びていかない。資本の収益率が賃金の上昇率よりも高ければ、資本から得られる所得は労働から得られる所得よりも早く成長する。初期の資本の分配状況は所得よりも不平等だから、長期的には不平等度が高まっていくというのである。

French School for Advanced Studies in the Social Sciences (EHESS)のオフィスで自著を開くThomas Piketty教授(REUTERS/AFLO)

 世界的に資本の取り分が多くなり、富の格差が拡大する。大きな所得格差の下では、民主主義を機能させるのが難しい。資産に対する世界的な累進課税で、この格差を縮小することが必要だと主張している。だから、左派の人々に支持される訳だ。

 ただし、なぜか、フランスでは米国ほど話題になっていないようである。私は14年の5月、イタリア、ミラノの国際会議でも、ピケティについての議論を聞いた。ミラノに限らずヨーロッパにいれば、ピケティの議論は当たり前という気がしてしまうのではないだろうか。

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「経済の常識 VS 政策の非常識」

著者

原田 泰(はらだ・ゆたか)

早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

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