経済の常識 VS 政策の非常識

2014年12月10日

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格差の原因と対応は多様

 所得格差の原因として日本または先進国で議論されていることは、高齢化、グローバル化、不況、スーパースター論、教育格差、男女雇用機会均等法格差の6点である。

 高齢化とは、高齢者ほど所得格差が大きいので、高齢化すれば、自動的に格差が拡大していくことである。これは、日本の格差で指摘されていることであり、データの裏付けもある。

 グローバル化とは、所得の低い国の人々が低賃金で働くがゆえに、所得の高い国の賃金の低い人の賃金がなおさら抑えられ、格差が拡大するというものだ。日本で喧伝されるが、実証的証拠には乏しい。現在、アベノミクスによる景気回復で、非正規の賃金が上昇している。不況が格差を拡大した効果は、大きかったのではないだろうか。

 スーパースター論とは、次のようなものである。レコードもCDもない時代には、音楽を聴くには演奏してもらうしかなかった。すると、技能がそれほど高くなくても、音楽で所得を得られる人はたくさんいた。ところが、録音で音楽を簡単に聴けるようになると、人々は、最高の音楽家の録音だけを求める。かくして、スーパースターの所得だけが急騰し、他の音楽家は職を失ってしまうというのである。衛星放送で授業をする予備校教師や、様々な企業をCEOとして渡り歩く専門的経営者の存在を見れば、格差の要因の一つだと認識できるだろう。

 教育格差は、高い教育を受けた人とそうでない人との格差である。米国ではもっとも重要な要因とされているが、日本ではむしろ、親の所得格差が教育格差を生むという逆の文脈で議論されることが多い。

 均等法格差とは、より高い所得の人々同士が結婚をして共働きをし、格差が広がるというものだ。米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長の夫は、ノーベル賞経済学者のジョージ・アカロフ教授である。昔であればこれほどのスーパーカップルは考えにくい。女性の輝く社会は、均等法格差の生まれる社会でもある。

 とすると、高齢者の所得からも年金と合算して税金を取ること、景気を良くして人手不足状態が生まれるようにすること、親の所得に依らず教育を受ける機会が確保されること、高所得カップルからコストに見合う保育料を取ることなどが考えられる。資本だけに焦点を当てた議論では、考えるべき政策課題を限定しすぎるのではないか。

  
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◆Wedge2014年12月号

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