安保激変

2015年2月4日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター主任研究員

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 いつか起こるのではないかと恐れていた事態がついに起きた。ISIL(「イスラム国」)に拘束されていたジャーナリストの後藤健二さんが殺害されたのだ。湯川遥菜さんに続いて後藤さんも殺害されたことで、ISILに拘束された日本人が2人とも死亡するという最悪の結果になってしまった。ご遺族には心からお悔やみを申し上げたい。

 「72時間以内に2億ドルの身代金を払わなければ人質を殺害する」に始まったISIL側の要求は、その後、ヨルダンで拘束されているサジダ・リシャウィ死刑囚との人質交換へと変化し、最後はリシャウィ死刑囚の釈放と引き換えに、後藤さんに加えてヨルダン空軍パイロットのムアズ・カサースベ中尉を解放する、というものになった。しかも最新の報道によると、カサースベ中尉は、このような条件をISILが出したときには、既に殺害されていたようであり、檻の中に入れられた状態で生きたまま焼かれるというむごたらしい方法で殺害されたビデオが公開されていることが分かった。

アメリカでも注目
異例のオバマ大統領声明

 安倍総理のこの事件への対応は一貫していた。湯川さんと後藤さん2人がオレンジ色の囚人服を着せられて映っているISILによるビデオ映像が全世界を流れたとき、中東訪問中だった安倍総理は、ビデオ映像が公開されたあと、すぐに訪問先のイスラエルで記者会見を行い、「人命を盾にとって脅迫することは許し難いテロ行為で強い憤りを覚える。2人に危害を加えないよう、直ちに解放するよう、強く要求する」と述べた。その後も、「テロに屈しない」姿勢は揺らぐことがなかった。後藤さんの殺害が確認された後の声明では「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせるために国際社会と連携してまいります」と述べた。このような事件で実行犯に「罪を償わせる」意思を明確にした声明を出したのは、日本の総理大臣としては初めてではないだろうか。

「後藤さん殺害」映像公開を報じるニュース(写真:ロイター/アフロ)

 今回のISILによる邦人拘束事件は、アメリカでも大きく注目された。「テロとの戦い」を国家安全保障政策の最優先課題に位置付けるオバマ政権からのメッセージも早かった。後藤さんの殺害が確認された数時間後には、ホワイトハウスから「後藤健二の殺害に関する大統領声明」という題名のオバマ大統領からの声明が出され、同じく数時間後にはジョン・ケリー国務長官も自身のツイッターにお悔やみの言葉を書き込んだ。特に、「大統領声明(Statement by the President」というタイトルが付けられることが一般的なオバマ大統領の声明に具体的な件名がつくことは異例だ。

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