World Energy Watch

2015年3月18日

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 春闘の季節だ。賃上げ額に大きな影響を与えるのは電気料金なのだが、河野太郎議員のように、製造業で電気代がコストに占める比率は僅かであり、人件費に与える影響は少ないと誤解している人も多い。それがなぜ誤解なのか順を追って説明しよう。

 春闘をリードするのは、自動車、電機などの製造業だ。製造業では、電気料金の売上に対する割合は1%程度。この数字を見ると河野のように、ほとんど影響がないと誤解する人もでてくる。しかし、問題はコストあるいは売上に占める比率ではないのだ。実額をみると大きな影響があることが分かる。

 製造業が支払っている電気料金は震災後原発の順次停止による燃料購入費の上昇を受け上昇を続けている。工業統計を基にすると、13年度までで7000億円以上上昇し約4兆円になっている。一方、法人企業統計によると製造業の営業純利益(営業利益から金利などを差し引いたもの)は9兆6500億円。両方の数字の推移は図が示す通りだ。この工業統計データの対象は従業員数30人以上の企業なので、製造業全体では電気料金上昇の影響はもっと大きい。従業員数4人以上の事業所を含めれば、電気料金は8000億円上昇していると推計される。

 法人企業統計では製造業の支払っている給与と賞与は役員報酬も含め46兆円。役員を除くと、41兆8000億円だ。さて、仮に震災後の電気料金の上昇がなければ、営業純利益は7000億円以上増えていた。この金額が人件費に回っていれば、平均賃金は2%弱上昇していた筈だ。電気料金は燃料費などのコストから成るが、原子力の構成比などはエネルギー・電力政策が決めることになり、政策が電気料金に影響を与える。エネルギー・電力政策が賃上げ額を決めると言ってもあながち間違いではないだろう。

日米欧の成長を左右する製造業

 欧州委員会もシェール革命の恩恵を受けている米国政府も製造業の成長戦略を描くことに躍起になっている。欧州委員会は2020年に、現在15%にまで落ち込んでいる欧州連合(EU)の国内総生産額(GDP)に占める製造業の比率を20%にする目標を立て、電気自動車など6つの戦略分野を決めているほどだ。

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