世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月24日

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 グリーンスパン元米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、米国のシェール石油がOPECに代わってより有効な価格の安定装置になりそうだという趣旨の論説を、2月19日付フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿しています。

 すなわち、米国のシェール石油革命は、通常の外交では達成出来ないような地政学上の変化をもたらしている。石油価格が半分以下になり、ウクライナの騒乱によるルーブルの崩壊と相俟ってロシア経済に打撃を与えている。イラン経済は弱体化し核問題の合意の可能性を高めた。ベネズエラは破綻の瀬戸際にある。これは経済的・地政学的な著しい変化であり、その恩恵を得ているのは米国とその同盟国である。

 石油価格の崩壊の原因には、シェール層から石油を採掘する米国の技術開発がある。これが米国における石油生産を増大に転じさせ、グローバルな石油の生産と消費のギャップが拡大した。サウジアラビアは供給過剰に直面したが、市場シェアを失わないよう、「調整役としての産油国」の役割を放棄し、価格維持のための減産を拒否した。

 米国は、70年代の石油禁輸の後、OPECに石油価格決定権を奪われたが、シェール革命は、OPECというカルテルよりも遥かに有効な価格の安定装置になりそうである。OPECは価格決定権を放棄しつつあり、2度と取り返せないであろう。それは、シェールの技術が弾力性に富むからである。シェール油田では在来型油田よりも早く生産に入れる一方、急速に枯渇する。在来型油田は20年以上にわたり生産を続けるが、シェール油田ではその半分以上が最初の2年間に汲みあげられる。従って、シェールオイルは、在来型の石油に比べて、生産が急速に拡大したり縮小したりし得る。その結果、OPECによる生産量の決定と異なり、市場価格の変動が自動的にシェール石油の拡大と縮小を誘導することになる。

 現在のところ、原油価格下落にも拘わらず、米国の石油生産は落ちていない。一年前、石油価格が1バレル100ドルを超えていた時、シェールオイルの生産コスト削減のプライオリティーは低く、汲みあげること自体が最重要であった。今日の価格(1バレル約50ドル)では、コスト削減が至上命題である。シェールオイル生産者がその投資を革新的で利益の出るものに維持出来るかどうかは、間もなく判明しよう、と述べています。

出典:Alan Greenspan, ‘Opec has ceded to the US its power over oil price’(Financial Times, February 19, 2013)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/92ab80e4-b827-11e4-b6a5-00144feab7de.html

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 これまではOPECという生産者のカルテルが原油価格を決定してきましたが、今後は、原油価格決定は需給バランスに基づいた市場原理によることになっていくであろう、との分析です。

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