チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年5月1日

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 先月29日午前(日本時間30日未明)、安倍晋三首相が米国議会の上下両院合同会議で行った歴史的な演説はある意味、この2年間中国が中心となって挑んできた「対日歴史戦」に見事な決着をつけることとなった。

米上下両院合同会議で演説する安倍首相(写真:新華社/アフロ)

アメリカを「歴史戦」の主戦場とする中国

 本コラムでもしばしば取り上げてきたように、第2次安倍政権の樹立以来、特に2013年末の安倍首相の靖国神社への公式参拝以来、中国の習近平政権は全力を挙げて「対日歴史戦」を展開してきた。国内において習政権は、2014年の1年間で、日中戦争勃発のきっかけとなった盧溝橋事件が起きた7月7日、戦前の日本陸軍「支那派遣軍」が当時の中国政府に「降伏」した9月3日、いわゆる「南京大虐殺」が始まったとされる12月13日という3つの日を選び出して、「国家的記念日」を一気に制定した。そしてこの3つの「国家的記念日」に習近平国家主席の出席の下で大規模な「国家レベル」の記念行事を行い、全国的な反日ムードを盛り上げた。

 国外においては、安倍首相の靖国神社参拝後、中国政府は世界主要国の中国大使や親中派の知識人・メディアを総動員して、いわば「歴史認識問題」を材料にした日本攻撃の宣伝戦を地球規模で全面展開してきた。「日本は歴史を反省していない」、「日本は戦後秩序を破壊したい」といったレッテルの貼付けを行うことによって、「日本こそがアジアの問題児・悪人」というマイナスイメージを世界的に広げようとしてきた。

 その中で、習政権が最も力を入れているのはやはり、アメリカにおける反日宣伝戦の展開である。理由は後述するが、アメリカこそが中国にとって「歴史戦」の主戦場だからである。そのために、中国政府は駐米大使の崔天凱氏を中心に凄まじい対日攻勢を仕掛けたことは2014年1月24日掲載の拙稿にて克明にレポートしている。

 その一方、習政権は対日外交においても、いわば「歴史認識問題」を「最重要問題」として全面的に持ち出している。たとえば2014年11月と2015年4月、習近平主席が2回ほど安倍晋三首相との首脳会談に臨んだが、このわずか2回ほどの短い首脳会談のいずれにおいても、習主席の話の半分以上が「歴史問題」であったことが確認されている。特に中国側の発表を見ている限りでは、習主席が終始「歴史問題」にこだわり、あたかも「歴史問題」を持ち出して日本を叩くという唯一の目的のために安倍首相と会ったかのようにさえ感じられる。

 胡錦濤政権よりもことさらに「歴史問題」にこだわり、「歴史問題」を持ち出して安倍政権を叩こうとする習政権は一体何を狙っているのか。それはやはり、習政権自身が進めようとしている国際戦略と大いに関係があろう。

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