なるほど。そういうことなのか……そういうことになってきているのか……カチャカチャと人間脳を駆使してみるが、「すごいことになっているなあ」という情けない感想をはじき出すのみ。ロボットというと、万博の展示や作業ロボット導入という話題でブームになってきたが、それとは明らかに違う段階に入っているということは、かろうじて実感できる。
「何が変わったかというと、ロボットが産業になってきたということなんです。今、IT関連の大手企業がIT産業の次はロボットではないかと考えるようになって、シリコンバレーなどでも人や資金、アイディアがどんどんロボットに流れてきているんです。いよいよ本格的に、世界的に勝負するタイミングにきたのかなという状況です」
つまり高橋がこれまで挑んできたロボットに、時代がついてきたということになる。ITと人工知能、人とのコミュニケーション、暮らしの中のロボット……そんな言葉を集約した先に高橋の生み出すロボットがいるというイメージを描いてみる。
「ロボットとのコミュニケーションって、最後の部分では人とのインターフェースとしてのデザインが必要なんです。『腹減ったね』に対して、一週間に食べたデータからカロリー計算して献立を答えることが求められているわけではない。『そうだね、腹減ったね』でいい。テクノロジーだけを追い求めては人の生活の中に入っていけないということです。さらに人工知能に身体があることで初めて生まれる人とのかかわりや、そこで発生する課題も見えてきました」
人型ロボットが生活を変える
人工知能に身体を与える。それがロボットであり、身体を与えたことで新しい研究が生まれてくる。そこにITの次の産業の芽があるということなのだろうか。
「要は、スマートフォンの次です。すでにスマホは完成形。性能を上げて機能を増やして買い換えてもらうことがもう限界。スマホ本体だけでなく周辺産業も巨大なわけで、それがもう売れないとなると世界経済が困窮する。一部で期待されていたメガネ型端末、腕時計型端末も期待ほどではなく、次が見えない。ただ現在のスマホに唯一問題があるとすれば、音声認識機能があるのにあまり使われないという点です。人は、犬猫はもちろん亀とか金魚にまでしゃべりかけるのに、こんなに賢いスマホには話しかけない。それは四角い箱相手に話しかけようとは思えないから。ここに擬人化できる要素を与えたら何かが変わると思うんです」
人工知能に身体を与えるということは、スマホが人型ロボットになるということなのか。