WEDGE REPORT

2015年6月16日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 「MERS感染拡大 韓国政府は悪くない」というタイトルで、記事をウェブに出してから10日あまり。私がこれまでに書いた感染症もののウェブ記事の中で、これほど騒がれたものもない。タイトルだけ見て好きなコメントをする人が多かったが、きちんと中身を読み、正しく評価してくれる読者もたくさんいた。

インフルエンザとは違い
「知らない間に罹ること」はない

 10日間で確認された感染者数は5倍に、そして、死者数は7倍になった。しかし、幸いにも、MERS(中東呼吸器感染症)は相変わらず「当初の予測を超えない範囲」で流行している。

画像:gettyimages

 韓国における最初の患者が、中東のどこでどのように感染して来たのかは未だに特定されていない。また、患者を搬送した救急車の運転手が感染していることなどから、「MERSの感染力は意外とあるのかもしれない」との印象も受ける。しかし、最初の患者をのぞけば、3次感染でも4次感染でも、患者が感染した機会は分かっている。

 やはり、MERSはインフルエンザのような「知らない間に罹っていた」というような病気ではないのだ。この事実は世界中の科学者や政府関係者に絶対的な安心感を与えている。

 遺伝子解析の結果、現在韓国で流行しているMERS株は、中東で流行しているものと何ら変わりがないことが分かり、突然変異して毒性や感染力を強めている可能性は否定された。もちろん、これはMERSが今後も突然変異しないことを約束することではない。しかし、韓国での流行が突然変異を理由に起きているのではないという証拠は、国際社会にとっても非常に心強い安心材料である。

 韓国における最初の患者が「風邪にかかったかもしれない」と、最初の医療機関を受診した日(5月14日)から1カ月。現在までに確認された、韓国人のMERS感染者数は150名、死者数15名になった(6月15日、WHO発表による)。

実際の致死率は10%以下の可能性

 前回の執筆記事「MERS感染拡大 韓国政府は悪くない」の中で予測した通り、感染者は次々と「発見」され、その数は3桁にのぼった。しかし、現在の韓国における致死率はちょうど10%。当初、40%と言われた致死率とは異なり、死者数を感染者数で割り算することのできる人であれば、感染者数の数が増えるにつれ、理論上の致死率が日々落ちていることに気づくはずだ。

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