医療界と対立するゴッドハンド
神戸の生体肝移植問題は第2のSTAPか


村中璃子 (むらなか・りこ)  医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

»最新記事一覧へ

日本の移植医療界は、ついに正面対決を決めたようだ。

 昨年11月に開院した民間病院「神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)」(神戸市中央区)で、生体肝移植を受けた患者7人のうち4人が術後1カ月以内に死亡した問題を受け、日本肝移植研究会(会長、京都大学 上本伸二教授)はKIFMEC肝移植症例調査検討委員会(以下、検討会)を設置。体制の不十分さや、移植の適応・治療判断などの不適切さを指摘する報告書をKIFMECに送付した。

神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市中央区)

 これに対しKIFMEC院長の田中紘一氏は、4月26日の記者会見で、「体制も判断も『標準を逸脱している』というが、標準とは何か」と反論。同病院には問題が無いことを強く主張してきた。

若干38歳にしてKIFMEC院長代行を
務めていた外科医

 しかし、5月17日の報道によると、日本肝移植研究会は、今度は生体肝移植医だけではなく、すべての移植医が参加する日本移植学会も巻き込んで、生体肝移植はICU専門医や感染症科など他科がそろった総合病院並みの体制で実施するよう、全国の移植医らに勧告する予定(注)

(注)5月22日、日本移植学会と日本肝移植研究会は「生体肝移植実施施設体制に関する緊急注意喚起」を発表した。

 現状のままで移植再開を急ぐKIFMECに対して、移植界が緊急に団結し、体当たりで「待った」をかけたことになる。

 田中氏と言えば、世界的にも有名な、生体肝移植界のゴッドハンド。田中氏にどんな感情を抱く医師であっても、誰もが手術の腕前を認める。また、田中氏の仕事上のパートナーとして、国内外の手術を共に行っていた山田貴子氏は、若干38歳にしてKIFMECの院長代行を務めていた外科医。山田氏は死亡4例中3例で執刀しているにもかかわらず、ある症例の手術を機に1カ月間の休養をとり、この騒ぎの中、一度も表に出ることはないまま5月1日付で同院を退職していることから、関係者の間では無責任さを問う声があがっている。

 世界的権威の傍らに若き理系女子という構図。そして、KIFMECが理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(略称CDB、現・多細胞システム形成研究センター)から目と鼻の先にあることもあり、この問題を「第2のSTAP騒動」と呼ぶ人もいる。しかし、問題の根本は、日本の生体肝移植の歴史における田中氏の独特な立ち位置だ。

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「WEDGE REPORT」

著者

村中璃子(むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍