中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年9月10日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 足元のデフレ傾向が再び強まっている。7月の消費者物価は前年比▲2.2%となり、天候等の要因により変動の激しい生鮮食料品やエネルギーを除いたベースでも前年比▲0.9%と6月よりも下落幅が拡大している(右図)。

 物価には企業間取引の価格を示す企業物価もあり、足元の企業物価も下落している。それは、基本的には資源価格などの下落が大きく反映しているからであり、需要が弱いために販売価格に仕入価格を十分に転嫁できない問題もある。

 しかし、消費者物価には、企業物価が対象としていない家賃、外食、医療、公共料金などのサービスの価格が含まれており、そのウエイトは6割近くもある。したがって、消費者物価の方が、網羅的な指標とも言える上に直接消費者に関係する品目の価格を示したものであるだけに、国民にとって馴染みやすく、影響も大きいと言える。

 足元での消費者物価の下落は日本だけではなく、欧州諸国や中国でも生じている。したがって、90年代の終わりから2000年代初めにかけてデフレ不況に主として日本だけが陥った時と比べれば、今回のデフレは世界的な広がりを持っていると言える。

 その背景にあるのは、金融危機に伴う世界経済全体の落ち込みである。デフレの要因にはカネやモノの需給動向といったことが複雑に絡み合ってはいるものの、世界的に金融が緩和していて主要中央銀行が経済へのマネー供給を積極的に行っていることを踏まえると、今回のデフレの原因としては需要の急激な落ち込みによる供給力との格差拡大(需給ギャップの拡大)が大きいと言える。

 もっとも、日本は、資源価格の高騰期を除けば、すでに10年ほど消費者物価がデフレ基調にあり、世界の中でも最もデフレ懸念が強い国の一つとみなすことが出来る。そして、単純に今回の金融危機だけがその原因とみなすことも出来ないだけに、デフレ傾向の持続を軽視するわけにはいかない。

デフレはなぜ怖いか

 デフレの問題は、その怖さが人々の間で深刻に認識されていないように見えるところにある。というのは、デフレはモノやサービスの価格が下がることであり、商品やサービスが購入しやすくなることは消費者に歓迎されやすいからである。もちろん、これで済めば大いに歓迎すべきことで、決してデフレが怖いことにはならない。

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