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2015年7月17日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 FDA(米食品医薬品局)は、6月17日付の報告書において、トランス脂肪酸には「安全な基準値は無い」と結論づけました。トランス脂肪酸の摂取量はゼロであることが望ましく、「摂れば摂るほど直線的に心疾患の発症率は上がっていく」としたのです。

画像:iStock

 「直線的には上がらない」「○○グラムまでならば問題ない」など数々の反論がある中、この結論は少々、断定的すぎるようにも見えます。一方でFDAは、心疾患のほか、がんや糖尿病、アレルギーや認知症など他の病気とトランス脂肪酸との関連性については明言を退け、「はっきりと関連性が認められるのは心疾患のみ」という判断もしました。 

 ここで、気になるのは、2003年にWHO(世界保健機関)とFAO(国際食糧農業機関)が提唱した「トランス脂肪酸は1日の総摂取カロリー量の1%未満」という国際基準値です。数々の論文を解析し、専門家の意見を総合した結果として、「安全な基準値は無い」と言い切ったFDAは、言ってみれば、国際基準に物申した形。10年以上も前に定められた国際基準は無効であり、「もっと厳しい基準が必要なのだ」と主張していることになります。

 アメリカの決定を受けて、今後、国連機関がトランス脂肪酸の評価の見直しを行うのか、各国がトランス脂肪酸に関するより厳しい規制を始めるのかはわかりません。しかし、アメリカは、食品添加物や農薬など、他の有害物質については他国よりも緩い基準を用い、自国の産業を保護してきた国です。アメリカがトランス脂肪酸に限ってこのような判断を下したのは、まさに驚きとも言えます。

「米英脂質戦争」が勃発?
「今のガイドラインはあてにならない」

 合成着色料に合成甘味料、農薬に防カビ剤、発色剤、成長調整剤——人間が人工的に作り出した「便利で体に悪い食べ物」はたくさんあります。他の物質に関する禁止運動も多い中、トランス脂肪酸に「3年以内に全廃」という白羽の矢があたったのは、まさにお気の毒さまとも言えなくはありません。しかし、「安全である」とは断定できず、あのFDAが「安全値などない」と言っている以上、「マーガリンはなるべくやめておこうかな」という気にはなります。

 こうなってくると知りたいのは、マーガリンなどトランス脂肪酸の多い油の代わりとなる油の方。特に、トランス脂肪酸という言葉を耳にするようになるずっと前から悪いと言われているバターの危険性はどうなのでしょうか。

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