トランス脂肪酸撲滅に見え隠れする
業界団体のロビー力

米国トランス脂肪酸騒動の裏側(前篇)


村中璃子 (むらなか・りこ)  医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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「身体に悪いもの」として、この数年よく耳にするようになった「トランス脂肪酸」。私の周りでも「マーガリンを食べない」という人が増えました。ところが、トランス脂肪酸は、マーガリンを避けたところで避けて通ることの出来る食品ではありません。菓子パンやドーナツ、フライドポテトやフライドチキン、スナック菓子など、私たちが「美味しい」と感じる身近な食べ物にトランス脂肪酸は含まれているからです。

画像:iStock

 それもそのはず。トランス脂肪酸を含む油は、ファストフードやお菓子の「さくっ」とした食感を作ります。また、バターや植物油などと比べると、格段に日持ちする上、安い。トランス脂肪酸を含む食品の代表選手であるマーガリンも、1869年、ナポレオン3世の時代に、庶民や軍隊のための「高価なバターの代用品」として考案され、2年後に今のユニリーバ社の前身となる企業が製品化したのに始まります。

 私たち庶民がコンビニやスーパー、ファストフード店などで、美味しいものを、簡単、かつ安く手に入れられるようになったのは、まさにトランス脂肪酸のおかげとも言えるのです。

マーガリン(トランス脂肪酸)が禁止なのに
バター(飽和脂肪酸)は禁止されない理由

 6月16日、トランス脂肪酸、正確には植物性の油から「水素添加」の技術によって固形にした、トランス脂肪酸を多く含むマーガリンやショートニング等の油が、3年以内にアメリカの食品市場から消えることが決まりました。トランス脂肪酸は、摂れば摂るほど血中の悪玉コレステロールを上昇させ、善玉コレステロールを減少させることが知られています。

 しかし、このニュースを聞いて、「なぜトランス脂肪酸が真っ先に!?」と思ったのは私だけでしょうか。炭酸飲料水にタバコ、合成着色料に発色剤。ちょっと考えるだけでも市場には「百害あって一利なし」のものが数多くあります。なぜトランス脂肪酸が真っ先にやり玉に上げられ、事実上の全廃を宣言されたのでしょう。

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著者

村中璃子(むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

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