東芝事件で改めて問われる
社外取締役の選任方法を見直し

社外取締役という新たな「天下り先」


中西 享 (なかにし・とおる)  経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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3代にわたる歴代社長が利益の「水増し」をしていたことが発覚した名門大企業の東芝。繰り返される日本企業の「ごまかし」不正行為は、規制当局がいくらコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を求めても是正されるものではないことが明白になってきた。これまでは企業に対して「ごまかし」はしないという企業性善説に基づいて金融行政が行われてきたが、この際、考え方を根本的に変えて、企業性悪説に基づいた監督に切り替えてみてはどうだろうか。

画像:iStock

会計の専門家を監視役に

 東芝のケースは、不適切会計が起きた原因は「経営トップの権力抗争があったからだ」「チャレンジと呼ばれる無理な目標を掲げたためだ」などと指摘されている。だが、「ごまかし」がしみついた東芝の企業風土を変えるには、もはや内部の自浄努力だけではできないのは明らかだ。

 この名門大企業を変革するためには、企業は数字を「ごまかす」ものだという前提にたって、企業会計に詳しい専門家を社外取締役か常勤監査役に就任させ、その事業内容を常時点検、監督する。少しでも疑問な点が見つかると、即座に執行部門の責任者を呼び出して説明を求め、その現状を取締役会に報告させて情報を共有して対応策を取らせる。これくらいドラスティックな「外科手術」をして企業風土を根元から変えないと、「ごまかし」慣れした日本企業の透明性はクリアにならない。

 東芝のケースでは、4人いる社外取締役の一人が利益の急増した点に疑念を持って会計部門に問い合わせたものの、結果的には黙殺されてしまい、社外取締役としての機能を発揮できなかったという。4人のうち2人が外交官出身で、残りが大学教授と企業経営者だったが、企業会計に精通している社外取締役はいなかった。

 東京証券取引所が6月に発表した数字によると、上場企業で社外取締役を導入する企業が数年前から増え始め、一部上場企業では1735社が導入、全体に占める比率も過去最高の92%に達している。このうち社外取締役1人が660社、2人が682社、3人が393社と複数入れている企業も多い。比率が大幅にアップしたのは、企業統治の強化に向けて5月に施行された改正会社法や6月から適用が始まった東証のコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)などが影響しているとみられる。

社外取締役という新たな「天下り」先

 しかし、選任された社外取締役の多くが企業会計に詳しくなく、経営トップとの「お仲間」、重要な取引先であったりすることが多く、真の独立性を確保した『ご意見番』には程遠い存在だ。特に最近は東証などから社外取締役の導入をうるさく求められているため、企業側はてっとり早く、安易に社外取締役を見つけようとしている。

 この結果、「天下り」先が減ってきている中央官庁のキャリア官僚にとっては、社外取締役への就任は格好の「天下り」先になっている。企業にとってみれば中央官庁の局長・審議官以上経験者が社外取締役で入れば、対外的にも箔が付くことになる。

 就任した官僚OBは月に1-2回程度の取締役会に出席し、黙って座っているだけで、年収1000万円以上の収入になるから笑いが止まらない。しかも社外取締役のため、大きな責任を取らされることもない。中央官庁の事務次官を退任後に複数の大手上場企業の社外取締役に就任したある官僚OBは、「責任の重い企業トップになるよりは社外取締役の方が気楽でよい」と話しており、この程度の認識では社外取締役としての監視役を期待するほうが無理だろう。

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中西 享(なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

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