World Energy Watch

2015年9月11日

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 太陽光などの再生可能エネルギーによる発電設備を普及する手段として考えられたのが、固定価格買い取り制度(FIT)だった。再エネには、エネルギー自給率向上、気候変動問題への対処というメリットがあるものの、コストが高く市場に任せたのでは、普及は覚束ない。発電された電気を長期に固定価格で高く買い取ることで、投資家にリスクが限定された収益を保証する制度がFITだ。買い取りに要する費用は電気料金に上乗せされ消費者が負担する。

 制度をいち早く導入したドイツを筆頭に、FITにより欧州主要国では風力発電設備が2000年頃から、太陽光発電設備が2010年頃から急速に導入された。FITが導入された当初は、太陽光設備では小規模の住宅用が導入の中心であったが、やがて大規模な事業用設備への投資が増えてくる。風量と日照に恵まれていたイタリア南部でも多くの事業用の設備が建設されたが、投資家のなかにはマフィアも含まれていた。マネーロンダリング、資金洗浄に適し、長期にわたり収益が保証される投資案件をマフィアが必要としていたのだ。

(iStock)

 しかし、消費者が負担する電気料金で買い取り価格を負担することから、電気料金の上昇を招き、FIT制度は各国で見直しされることになる。本連載でも何度か取り上げた通りだ。イタリア政府もFITを遡及して見直した。結果、再エネ設備への投資の魅力は薄れてしまったが、マフィアは再エネで儲ける新たな手法を生み出し、ドイツで実行している。

見直しと減額が続く欧州諸国の再エネ政策

 欧州の太陽光、風力発電設備導入の主たる政策だった固定価格買い取り制度(FIT)の廃止、見直しが続いていることは、「ドイツがプーチンより恐れる電気料金値上げ 再エネ政策見直しに舵を切るEU」「報道ステーションが伝えない再エネの不都合な真実 政策破綻のスペインから学ぶことは何か」でも伝えた通りだ。欧州諸国が再エネ導入政策の見直しを行っている最大の理由は、電気料金の上昇が続き、消費者が堪えられないレベルになってきたことだ。 

 図‐1の欧州主要国の家庭用電気料金が示すように、1ユーロ、135円として換算すれば、2014年前期の家庭用電気料金は、1kW時当たりドイツ40円、イタリア33円、スペイン29円、英国26円だ。震災後原発の停止により家庭用を中心とした電気料金が25%上昇した日本の料金は14年の平均で25.5円だから、欧州主要国の電気料金は値上がり後の日本より高い。

 欧州主要国の電気料金上昇の大半は、再エネ支援政策として導入されたFITによるものだ。ドイツ、スペインでは既に政策の大幅な見直しが行われたが、英国では、8月末に太陽光発電向けの固定価格買い取り額の大幅減額が発表され、パネルを供給するパナソニックが英国政府に再考を要請する事態になっている。

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