ASEANスタートアップ最前線

2015年9月28日

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宮崎学 (みやざき まなぶ)

ベンチャーキャピタリスト

IMJ Investment Partners, Principal。2011年に株式会社電通に入社。以来、一貫してデジタル・マーケティング業務に従事。大手通販企業や金融機関のクライアント担当として、デジタルメディアを活用したマーケティング戦略立案と、事業成長にコミットした広告運用を得意とする。2015年、IMJ Investment Partnersに参画。ASEAN各国の投資案件発掘に加え、投資先の経営支援を行う。日本企業のアジア進出支援、アジアベンチャーの日本進出支援も担当。筑波大学にて学士(国際関係学)、東京大学にて工学修士(技術経営戦略学専攻)を取得。

※IMJ Investment Partnersは、シンガポールを拠点に、東南アジア全域で活動するベンチャーキャピタルです。本連載、並びにIMJ Investment Partners へのお問い合わせ・ご要望はこちら

 東南アジアのスタートアップ業界で、今、最も注力されている領域、それはタクシー配車サービスである。2014年12月、ソフトバンクは、マレーシア発タクシー配車サービスのグラブタクシーに約300億円投資し、筆頭株主となることを発表した。一方、ウーバーテクノロジーズは、企業価値が500億ドルを既に超え、世界中でサービスを展開している。もちろん、東南アジアにも既に進出済みだ。この2つの企業、同じタクシー配車サービスを展開しているとはいえ、起業のコンセプトは元々全く違うものであるから面白い。

 日本の都心部では、地下鉄があまりにも便利すぎて、タクシーの配車サービスを使う機会はほとんどないが、こちらではタクシーによる移動はよりメジャーな交通手段だ。この配車サービス、今や生活の必需品とも言えるほど社会に浸透している。

 そもそも、東南アジアのタクシーは、非常に課題が多かった。海外に行くと、空港の出口でいろいろな人からタクシーの勧誘を受けた経験がある読者の方も多いであろう。

 まず、タクシーにメーター(料金測定器)が無い場合が多い。この場合、料金は交渉制で、相場がわからなければ、言い値でぼったくられる可能性もある。たとえメーターがあっても、遠回りさせられて料金を不当に加算させられる心配がある。特に都市部では、タクシースタンドは行列になりがちである。一台のタクシーを捕まえるのに何十分も待たないといけない。さらに不便なことに、クレジットカードが使えない。

 さてこのような課題に対して生まれたのが、「グラブタクシー」だ。

「グラブタクシー」 
マレーシア発グローバル・メガベンチャーの誕生 

アプリを起動すると、自分の現在地とその周辺にいるタクシーが画面に表示される

 「グラブタクシー」は、2011年のハーバード・ビジネス・スクールのピッチイベントで準優勝し、東南アジアのタクシーが抱える課題を解決するアプリ開発会社として生まれた。「グラブタクシー」では、スマホのアプリを起動すると、GPSで、自分の居場所と近くにいるタクシーを地図上に表示してくれる。ユーザーは、ピックアップポイントと目的地を入力して配車サービスを申し込むと、近くにいるタクシーが応答し、指定した場所まで、ものの数分で迎えに来てくれる。

 On Call(配車サービス)にかかる費用が彼らの収入源だ。相場は国によって様々だが、シンガポールの場合、3ドル程度(250円程度)かかる。長いタクシーの列で20-30分待つよりも、数分で来てくれるタクシーにのることができる。

目的地と支払方法、ピックアップ時間を指定することができる。

 このグラブタクシー、特に海外の観光客にとっては安心だ。メーターの無いタクシーはグラブタクシーのプラットフォームに参画できないため、必然的にノンメーターのタクシーは排除されている。さらに、ドライバーの情報も載っているため、いたずらなことはできない工夫がされている。GPSで自分の位置情報を常に追うことができるため、ドライバーが遠まわりしてメーター稼ぎしているかどうかさえも把握できる。

 また、最近、クレジット決済機能が追加された。このため、あらかじめアプリにカード情報を登録しておけば、キャッシュレスで対応可能だ。現地通貨に変える必要もないため、利便性はさらに増した。

 

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