世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月1日

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 9月6日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙社説は、目下の中東難民問題について、これは米欧がともに世界秩序の維持に確固とした対応を取っていないから起きている、と批判しています。

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 すなわち、溺死したシリア難民男児の写真は世界の注目をひき付けた。この問題は西側が世界の秩序維持の責任を放棄した時にどうなるかを示している。オバマは、中東からの撤退に拘泥し無策を決め込み、地理的にも近い欧州は米国の残した真空を埋めることをしていない。その結果、21世紀最悪の人道悲劇が起きている。アサドに対するアラブの春は、益々敵意に満ちた内戦になった。21万人以上が殺され、何百万人が国内外で避難民になっている。

 我々はシリアでの出来事がシリアにとどまらないことに気付いた。ISによってリクルートされたテロリストが欧州に帰りパリや列車で爆破事件を起こした。そして今は難民の流入である。

 教訓は、介入はリスクを伴うが介入の放棄もリスクを伴うということだ。違いは、何もせずに事の結末に対応していくか、あるいは、少なくとも事を形成するチャンスを持つかということだ。イラクでは2008年までに反政府勢力は壊滅されていた。しかし、オバマがイラクから全面撤退しシリアを無視し始めてから、イラクは再び悪化しISが拡大した。

 欧州は米国が世界の警察官の役割を止め、責任を周辺国に引き渡す時に何が起きるかを考えるべきだ。欧州が、必要な場合には軍事力を使ってでも、周辺地域の危機に対処できないならば、難民を受け入れるべきだ。

 メルケル独首相は、ギリシャ、ハンガリー、イタリアが直面する難民の受け入れを分担するために、自国への受け入れとともに欧州難民受け入れ割り当て制度を提案している。キャメロン英首相は4日、従来の政策を転換し、シリア国境地帯で直接千人単位の難民を受け入れると発表した。

 欧州は海上国境警備ができていない。だから難民業者は地中海ルートを使う。長年の海軍、沿岸警備隊への必要な投資をしなかったツケである。欧州全体の防衛支出は2014年に約2500億ドルで、対前年70億ドルの減少である。

 難民受け入れには経済力が必要だ。ドイツの経済成長は1.6%でしかない。他の諸国では更に悪い。大量の難民受け入れは福祉政策を圧迫し反移民感情も高める。労働移動を可能にするシェンゲン協定も危うくなるかもしれない。

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